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第22話

短め!

図書館でがっつり調べて、キャラハの森で分裂して自分で魔法を放ち、自分で防ぐという行為を行い続け、遂にエアカーテンも習得した。こういうのが必要な場面ってやっぱり咄嗟の展開だろうから、展開速度を頑張ってみている。ついでと言っては何だが、ユーロとクレアにも習得させておいた。折角風属性持ってるんだしな。ただこの魔法、【防御魔法大全】曰く、「竜のブレスの前ではちり紙のように破れる」らしいので、あまり過信は出来ない。もっと高位の【サンクチュアリ】という光属性の防御魔法なら竜のブレスにも耐えうるらしいが、サンクチュアリは遠い過去人類が失ってしまった魔法らしい。しっかり伝えとけよ!と思ったが、どうも魔法の難易度的に並みの人類には使用できず、伝えるべき相手に高い資質が求められるので、対応しきれず失われてしまったらしい。くそう。使えないと思うと使いたいものよ。

クレアは自分とユーロの服を作るついでにリオンの服も作ってくれた。これが、色も艶も手触りも素晴らしい布地で、抱かれてるとスベスベとして気持ち良い。クレアは色んな質感の糸を吐けるらしくて今の服は秋向けの肌触りはスベスベとしながら、通気性にも優れて蒸れないタイプらしい。これから冬に向かうと体温を逃がさない暖かな肌着とかも織れるようだが、流石に毛糸は羊毛の方が良いかもね、と言っていた。デザインもクレアのセンスで、中々リオンに似合う服を作ってくれる。試しにミュリの分も作ってあげたみたいなんだが、「こ、これは、“フラワーディ”の“ミルキーシルク”!!」とか言っていた。“ミルキーシルク”は王都の“フラワーディ”という人気服飾店が販売している布で、色、艶、手触り、全てが最高級でありながら、「どうやって作られているか」が極秘の布らしい。アラクネちゃんの糸だったわけですねー…多分ティムしてるんだと思われる。


「売れますか?」

「まあ、“ミルキーシルク”の類似品として扱われちゃうから、扱いは一段低いかもしれないけど、売れると思うよ。ただ、作り方がバレるとアラクネが乱獲されかねないからあんまりお勧めしない。」


ミュリに言われてクレアがしょぼんとした。布は売りたいが自分の仲間が乱獲されるのはお断りらしい。


「ま、まあ。いいじゃない。そんなに生活に困ってるわけじゃないんでしょう?」

「はい。とてもいい生活をさせてもらってます。三食昼寝付きです!流石に殆ど働いてないのに御厄介になるのも申し訳ないかなーと思って、こうやって布織ってるんですが…」

「僕は服を買わずに済んですごく助かってるよ?センスもいいし。」

「冬になったら毛糸玉を買ってくださればセーターも編みますよ。私も羊毛を身につけてみたいですし。普通にセーターを買うより安く仕上げてみせます。」

「なら、頼もうかな。」

「はい!」

「ね、ねえ、クレアちゃん…私にも、その…編み物教えてくれないかな…?」

「勿論いいですよ。」


ミュリは赤くなりながらちらちらリオンを見ているので、リオンに何か編んでくれるつもりなのだろうが…


『凄い作品が来そうだな…』


そっと念話をリオンにだけ飛ばした。


『き、気持ちは嬉しいから…』


リオンも戦々恐々としているようだ。

ミュリは見ての通り美しい。騎士科で成績上位の、運動神経抜群。かといって脳筋かと言われればそんなことはなくて、学科の成績も上位。性格も嫌味がなく、明るく朗らかで、物分かりが良い。まさに極上の少女。しかし不純物のないエメラルドが存在しないように、ミュリにも欠点はある。それはズバリ家事音痴である。リオンの、取れてしまったシャツのボタンをつけてくれようとして、シャツを血まみれにして謝ったり(ミュリの指が可哀想な状態だったので俺は治癒魔法をかけた)、調理実習の作品でリオンを毒殺しかけたり(俺はキュアポイズンを使った)、漫画の登場人物のようなベタな一面がある。毒殺に関する部分を述べるなら、「リオンに喜んでもらえる作品を作りたかったミュリ。だけど自分の弱点を自覚もしている。出来上がった作品は見るからにヤバそう。こんなのとてもじゃないけれどあげられない…!!悲しいけど自分で食べるしかない!」と悲しんでいたミュリを見て、半ば強引に作品を引き取って食べて「美味しいよ。」とリオンが喜んで見せたので、ミュリにはあまり非はない。ミュリは勿論それがリオンの気遣いからくる言葉で「ホントはヤバいシロモノ」だと自覚している。「ごめんね。」と「ありがとう。」を交互に繰り返して泣いていた。どう見てもヤバいシロモノを笑顔で食べて、ミュリが去るまで、倒れなかったリオンを正直尊敬した。想像を絶する味がしたことだろう。スライムは何でも食べるし、毒も効かないので、多分俺は食べても平気だとは思うけど。


『まあ、ミュリの作品は出来てからのお楽しみ、ということで。再来週は実習だね。』

『そうらしいな。』


テイマークラスの野外実習なのである。リオンの成績のラストチャンスである。泣いても笑ってもこの実習の結果如何で、進級が決まる。言葉を理解して治癒魔法を使えるスライムをティムして以降リオンの成績は鰻登りなんだがな。

リオンと同じようにウェザーバード(サニーはジュエルウェザーバードだが)をティムしている生徒も秋の半ば頃になるとウェザーバードの羽の艶が落ちてなんだかみすぼらしくなってしまうのに、リオンのウェザーバードは艶々しているので「何故か?」と教師生徒一同に尋ねられ、「ウェザーバードにはディラの他にもう一つ好物があります。チュチュラシカの実です。チュチュラシカの実にはビタミンCが豊富で、ウェザーバードはそれを摂取しているのです。皆さんはウェザーバードが基本肉食だからと言って、安易に肉ばかり与えていませんか?チュチュラシカがあればそれを与え、無ければ何か柑橘系の果物を与えると羽の艶が維持できるようです。」と答えた。初耳だった教師陣が色めき立ち、「書物にまとめるべきだ!」とか言ってリオンに論文を書かせている。因みにどうして羽の艶の維持方法が分かったかなど、当然、本人サニーに念話で聞いたからである。自分のことは自分が一番理解できているらしい。サニーも以前チュチュラシカの実を食べないでいたら、自分の羽毛があまり輝かなくなったことを知って、「何故だろう?」と色々研究してみた結果らしい。論文はサニーの許可を得て、サニーの研究をまるパクリしている。サニーは人間社会のことなんてどうでもいいので気軽に許可を出していた。

ウェザーバードの功績でさえものすごくでかいのに、戦闘能力も、知能も、美しさも、器用さも兼ね備えたアラクネをティムしているのである。しかも珍しい雄個体まで。もう、模擬戦では負けなし状態である。

これで評価されなければ嘘である。まあ、リオンはスタートダッシュがかなり遅いタイプの生徒だったので、俺らも「進級できると思う…多分…きっと。」くらいの感覚である。時間と実力に余裕があれば遠出してもう1,2種ゲットしたかったところだが、学院に通っていると、中々遠出は出来ず、かといって近場の魔物はたいして評価にならず、上手いこと行かなかったのである。


『野外実習って言ってもティムモンスターに獲物を狩らせて集めるだけのお手軽実習だろ?』

『内容自体はシンプルだけど、ラヴィは時空魔法で物を収納していることを秘密にしてるじゃないか。てことは持てる獲物はユーロとクレアと僕が運べるだけ。どの獲物をどういう保存状態で運ぶか吟味しなくちゃならないんだよ?』


そうだった。俺は常に無制限(実は魔力依存らしいが、どうも俺は日々魔力が増大しているらしいのだ)に運べるから、全然運搬のこと考えてなかった。


『めんどくせーな。実習場が同じだから見られる可能性のことを考えると、感知以外の俺の能力はまるっと隠蔽だしな。俺の酸で焼くと獲物が傷むから、感知は俺が頑張って、実戦はクレアに弓で頑張ってもらうのが一番傷の少なくなる方法だな。ユーロは運搬役で。お前には期待してない。』

『アハハ。運搬も一人ではちょっと自信ないよ。』

『11歳って身体ちっちぇーな。』

『まだ子供だからね。』

『お前って将来何になるの?』

『一応若いうちは冒険者やろうと思ってるよ。』

『歳食ったら?』

『ミュリが僕と結婚してくれるならアーノルドさんの跡を継いで商人かな?』

『ふぅん。』

『ラヴィはどうするの?』


スライムはちょっと寿命がよくわからない生き物なのだ。老化しないが、そもそもがか弱い生き物なので野生のスライムの寿命は短命。敵に進んで襲われることはないが、人間に狩られたり、自分から進んで事故死して数を減らしているようだ。あと俺もやってることだけど、スライムは共食いもする。記録では、昔スライム好きのテイマーが愛玩用にティムしていたスライムはテイマーが死ぬまで生きたらしいが、テイマーの没後はすぐに人間に駆逐されてしまったので正確な寿命はわからない。


『一応お前が死ぬまでは一緒にいるつもりだが、出来ればボケるなよ?痴呆老人の介護とか結構しんどそうだし。』

『ボケたくないけど、どういう努力をすればいいのかわからないな。』

『脳トレだな。』

『のうとれ?』


そうして話は脱線していった。



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