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世にも不思議な短編集

それはただの、XXでした。

作者: 沙由梨

ああ、そうか。


羨ましかったのか。

「そりゃあ、まあ、ショックでしたよ」


これでもかというくらいに澄み渡っている青空に向かって、誰に言う訳でもなく、ただ呟く。


屋上のフェンスの向こう側、何も遮るものがないコンクリートの地面に、足を宙に放り出した状態で座り込んでいた。


ふと視線を下げて校門近くを見つめれば、仲良く談笑しながら帰っていく一組の男女が目に入る。


その男女を疎ましそうに睨みつければ、はあ、と溜息を吐いて地面に寝転がった。


「でも、不毛だとわかっていて告白したんだ。後悔なんてしていないさ」


ふはっと嘲笑し、寝転んだばかりの体を起こしてフェンスに寄りかかる。


再び青空を見上げれば、まるで見ないでと言わんばかりにやってきた雲が、すっぽりと、綺麗に青空を覆い隠した。


「大丈夫、恋心なんてすぐに生まれてくる。一々落ち込むのが馬鹿らしいんだよ」


ああもう、本当に、馬鹿らしい。まるで自身に暗示をかけるかのように、何度も、何度も何度も言葉を吐き捨てる。


馬鹿らしい、馬鹿らしい、馬鹿らしい。




――――本当に?




「ああ、本当さ。一度の恋を大切にしたいなんて、ただのエゴに決まってる」




――――自分だって捨ててないのに?




「捨ててるよ。だって、あれを見ても全く落ち込まないんだから」




――――嘘つき。




「嘘なんかじゃない、事実さ。ああそうだ、明日きちんと祝福しないとなあ」




――――祝福なんて出来ないくせに。




「大丈夫。心を込めて言えば、数日経ってても喜んでくれるよ」




ケラケラと、何でもないように笑い続ける一つの影。


カラカラと、一日中水分を与えられなかった喉が、無慈悲にも渇いていく。


日は傾き、世界を照らしていたはずの太陽はいつしか身を沈めており、澄み渡っている青空も、どこかに消え去っていた。


空を見上げる瞳に映るのは、星が爛々としている真っ暗な空と、微かに世界を照らしている月のみ。


それでも影は、笑うことを止めずに自問自答を繰り返す。


その永遠が終わりを迎えた時、きっと影は――――。
















『20XX年X月XX日に、XX県XX市XXX高校のグラウンドにて、一人のXX生徒がXXとして発見されました。警察はXXの方向で調査を進めており――――』




プツッ。


ねがいは、かなったよ。

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