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ダンジョンのあらまし

 結局おもちゃは返してもらえそうにない。


 『真の魔王』とやらは、こっちの意思を無視して、電話のお問い合わせの音声案内みたいに、一方的に情報を押し付けてくる。


 その情報をまとめると、こうだ。


・ラスガルドという異世界には、無数のダンジョンがある。


・ダンジョンには、『真の魔王』と呼ばれる存在がおり、全てのダンジョンを総括している。


・『真の魔王』は、ラスガルドに住まう様々な知的生命体の中から、素質のある者を『魔王』に任命し、ダンジョンの経営にあたらせる。よって、ラスガルドにはたくさんの『魔王』と呼ばれる存在がいる。(←どうやら俺もこれの内の一人らしい)


・それぞれの魔王は、『扉』を通じて自分のダンジョンを他の魔王のダンジョンにつなげることができる。相手の魔王が許可した場合はその任意の場所に扉を開くことができ、許可されない場合には、それぞれの魔王が設定した『入り口』に強制的に接続される。


・魔王は、冒険者、もしくは、他の魔王の所有する魔物モンスターを殺すことで、魂を得ることができる。ただし、魔物を殺した場合に得られる魂の半分は、『真の魔王』にマージンとして徴収される。冒険者を殺した場合にはそうした制限はない。


・魔王は、魂を『真の魔王』に捧げることで、人知を超えた特殊能力スキルを取得したり、ダンジョンを拡張・強化したり、魔物モンスターを創造することが可能である。


・創造するダンジョンの構造は基本的に魔王の任意で決定できるが、必ず最終的に魔王へと至る『正解』の道を一つは用意しておかなければならない。(全部行き止まりにする、みたいなのはダメ)


・『真の魔王』は魔王に、初期準備分として、1000ルクス(魂の単位らしい)を与える。


「要は、フランチャイズみたいなもんか。ふーん」


 俺は呟いた。『真の魔王』とやらの目的は知らないが、おそらく一人でダンジョンを経営できる範囲には限界があるから、他の奴に経営を委託しようと言うのだろう。


 対して魔王になる側のメリットは、特殊能力と冒険者や他のモンスターから奪える装備品といったところだろうか。


「納得したか?」


 何だかんだでくっついてきた痴女が――いや、『純潔のシャテル』とやらが意外そうに言った。


「ああ。さすがにここまでやられたら信じざるを得ないからな」


「それは上々。では、わらわの疑問に答えてもらえるかの?」


「あー、うん。別にいいけど、なんだっけ。俺の暮らしていた国について、知識が豊富なはずのあんたが、何で知らないかだっけ?」


「そうじゃ」


「まあ、あんたが見慣れないのも無理ないと思うぞ。俺がさっきまでいた部屋はあんたらにとっての異世界だからな」


「ふむ……。まさか、とは思ったが、やはりそうか」


「まさかって言うけど、あんた、このダンジョンに詳しいんだろ? だったら、こういう現象なんて日常茶飯事じゃないのか?」


「いや。魔王の選抜はそこかしこで行われておるが、わらわが知っている限り、ラスガルド以外の人間が魔王に選ばれた例などは聞いたことがないのじゃ。うーむ、これも『真の魔王』の意思ということか……」


 シャテルがそんな意味深な言葉を吐いて俯く。


「『真の魔王』の意思ねえ……。雇われ魔王にダンジョンを発展させるのはいいとして、そいつの最終目的って何なんだ? やっぱ世界征服とかか?」


 さっきの『真の魔王』の言葉は、機械的なシステム面の説明だけで、特定の人物の意思というものを感じなかった。善意も悪意もない、ただのマニュアルみたいな感じだ。


 魔王同士の戦闘にマージンを設けてることからして、『ダンジョンを発展させる』という意図があることだけは確かなのだろうが、大目的が分からないのはちょっと不気味だ。


 もちろん、異世界の方はどうなろうと俺には知ったこっちゃないのだが、こっち(地球 )とダンジョンが繋がってしまった以上、よくあるフィクションみたいに魔物が地球を侵略しにきた、的な展開になっても困る。


 いや、正確にいえば、俺の部屋とかを荒らされるのが困る。


「地上に暮らす者どもはそう言っておるが、はっきりとはわかっておらぬのじゃ」


「そんなもんか。で、あんたはこの扉から入ってきたのか?」


 俺はダンジョンの部屋にデフォルトで設置されていた扉に近づいていく。


「そうじゃよ? いらぬ世話かもしれぬがあまり扉には近づかぬ方が――」


 バン!


 シャテルの忠告と重なるように、突如、眼前の扉が勢いよく開く。


 ギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 その先で、隻眼の巨人が電柱ほどの太さがある棍棒を振り上げていた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 とりあえず、なめられないように威嚇してみた。


「頭を下げよ!」


 シャテルが叫んだ。


 俺は言われるがままに地面に伏せる。


「『シャイニングレイ!』」


 頭上を一条の光線が走り抜ける。


 ブチュン!


 その一撃は見事に巨人の頭を捉える。スイカにも似た赤茶色い塊が、周囲に飛び散った。


「接続先を指定せぬ扉は、ランダムにどこのダンジョンにでもつながるからの。うかつに近寄らぬことじゃ」


「えー、そういうことは初めに言ってくれよ」


 俺は叩きつけるように扉を閉め、慌ててその場を離れた。



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