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ライオネル④

ライオネルはブレンドに別れを告げ、事件から一ヶ月経とうとしている今も慌ただしい警察署を後にした。

次は教会に足を運んでくれというと、彼は苦笑いをし、事件が片付いたらと言った。



ブレンドは一度も謝らなかったな。結局、一度も。

ライオネルの心にはそんな思いがじわじわと侵食し始めていた。


覚えていないのだろう。

例え覚えていてもだ、彼に言わせればあれは十一か十二歳の子供が仕出かしたただのイタズラになるのはわかっている。

髪を引っ張ったり本を取り上げたり背中を蹴ってみるなどという行為は、外で大勢となにかに夢中になる人間にとっては、一人本を読んでいる人間のような、自分とは全く違う生き物に対するちょっとした挨拶になるのだろう。


やられた側は忘れない。


ライオネルはルーシー・ブルーリーを思う。

あのときの自分より何個か年を重ねただけだ。それで、この結果。

なんという行動力だろう。だが本当にこうするしかなかったのだろうか。なにか、もっと別の。いや考えてもキリがない。終わってしまったことだ。


ライオネルはそれでも彼女のことについて調べるのをやめられなかった。まるでなんらかの中毒にでもなったかのように。



こうしてルーシー・ブルーリーがライオネル・バービーの心に住み着いた頃。


シンシア・ブルーリーは死の淵をさ迷っていた。

 










わたしがわるいといいたいの?わたしだけがわるいといいたいのね。みんなわたしをわるものにしたいんだわ。



あれから。

あらゆることが明るみになってから、シンシア・ブルーリーの頭を占めるのは。

世界が自分を悪者にしている。そんなことだった。


為すすべがなかった、世の中にはそういうことがたくさんある。それなのに。


私は連れて行こうとしたのにあの子があの男を選んだのよと(今となってはそれ自体理由あってのことだったが)そうグレアに言っても。

そうね、でも。でもと返す。

でも、それは。

でもでもでも。 

私は知らなかったと言っても信じてくれない。でもでもと否定ばかり。こんなことになるなんて誰が予想できたというの。


デービッドですらあのザマなのに!


グレアの家にも携帯にも元職場にも実家にも電話は来た。マスコミも。パソコンのメールなんて見れたものじゃない。


母親が娘を見捨てたことが今回の惨事につながったと、名前も知らない女優かなにか訳のわからない女がテレビ画面で訴えていた。

止めることができたと。

その前にあんたは誰?何様よ。


外に出れば同じような非難の目ばかり。

買ったものまでチェックされている。

かごの中を覗かれるのよ!そして親は生きていてパンやチキンやデザートを食べている!なんでも批判だわ!なんでも書かれている!


グレアはニュースを見るなネットをするなと毎日のように言っていたが、シンシアにはそれすら否定的に聞こえた(だって見る時間はたくさんあった)起こってしまった悲劇はどうすることもできないし、あなたも被害者だとは言ってくれたが、本心には思えなかった。


私が寝てしまった後、きっと夫と、私のことを話している。早くここから出て行ってもらおうと話しているにきまっているわだってアンディのあの私を見る目!

毛虫の集団でも見つけたかのような目なのよ。耐えられない。


気分を落ちつかせるためだった。

世の中には色々な薬があるから。


ひどく落ち込んだときに飲む薬涙が止まらないときに飲む薬気分を高揚させるための薬感情を和らげるための薬眠れない人のための薬嫌なことを忘れるための薬。


ドラッグストアは魅惑的だ。まるで魔法の薬を置いているかのように思えた。


飲む数を増やせば増やすほど効いている気がした。これをブランデーで飲むと不思議なくらい心地よくなりよく眠れたため(起きたときの頭痛が最悪だったが頭痛薬もちゃんとある)シンシアは毎日口にしていた。


薬は、不思議だった。


薬なのに、わかっているけど余りにも鮮やかなそれらはまるでシンシアには色とりどりのキャンディーやゼリービーンズにも見えて、これじゃ子供が間違って飲んでも仕方ないわねと、でもわたしは子供ではないから大丈夫。

そんなことを思いながら気が済むまで薬を飲み込んだ。たくさん飲まないと効いたような気がしなかった。


そして五日後、胃腸にたくさんの薬が詰まり体が持ち主を生かそうと嘔吐に向かったがその吐しゃ物が食道に詰まり息が止まるなどと。


シンシアは全くこれっぽっちも思っていなかった。


死の瞬間、やっと外に溢れてきたわけのわからない嘔吐物をフローリングになすりつけながらもがいていると、そこにデービッドがやってきて言った。


あの男が毒を持ったんだとはっきり言った。

グレアの夫が毒を仕込んだんだぞと。


彼女の頭の中でデービッドは声をあらげた。



結局、シンシア・モイストは娘と違い最後までデービッド・ブルーリーに支配され続けた。

 

 

 

 


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