ルーシー⑩
ルーシーは騒ぎを耳にしていた。外で。
パトカーが何台も走って行くのを見たし、救急車もヘリも見た。それらはみな花火の方向、つまりサウスポート高校がゴールのようだった。
すれ違った人が銃声が、と電話で話しているのを聞いて胸が痛くなった。
なにが起こったか、想像がついてしまった。でも、そんな恐ろしい想像当たって欲しくない。
ジョージ先生はなにをして、どうなってしまったんだろう。
ルーシーは次第に鼓動が早くなるのを感じていた。抱えていた三十センチ以上もあるクマのぬいぐるみに、さらに力を込めた。
それはジョージがルーシーに渡したロッカーの鍵と引き換えに、ルーシーが手にしたものだ。
最初ルーシーはそのクマのあまりの有様に吹き出してしまっていた。
本当にひどかった。
いくらぬいぐるみとはいえ、体を二つに折り曲げられ手足が突き出た状態だったからだ。しかもぎゅうぎゅうだった。
ロッカーのサイズとクマのサイズがほぼ一緒だったためだ。
先生ったらひどい。誰かにあげる状態じゃないわ。今にも悲鳴を上げそうよ。
だが引きずりだしたクマはずっしりと重かった。ルーシーは悟った。
本当はこんな物この世にあってはいけない、けど力のない者にとっては、
ジョージの顔が浮かんだが、ルーシーにはどうすることも出来ない。
家に帰るしかない。
誰も居ない家に帰り、クマをベッドの下に押し込んだところで玄関がものすごい勢いで開いた音がした。
ゆっくり部屋を出ると母親が階段を駆け上がってきていた。
「ああルーシー!大変なの!大変なことが起こったのよ!!」
ルーシーは黙って母親の話を聞いていた。そして、しばらくして、泣いた。
母が背中を撫で、もう終わったもう大丈夫もう怖くないのよ、などと的外れなことをずっと言っていた。
ルーシーはジョージのことを思って泣いていた。
こうすることを選んでしまったジョージが、取り返しのつかなくなることをするほど自分と同じくらいもしかしたらそれ以上に何かに追い詰められていたんだったと思うと気の毒で涙が止まらなかった。止めることすらできなかった。
自分が先生を加速させる一部だったかもしれないと思うと、涙が止まらなかった。
そして涙を分泌させているルーシーの頭の片隅には、あのURLへ接続しなければという思いが浮上し、それはどんどん強くなっていた。




