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ジェニファー①

ジェニファー・ホワイトは当然その画像を見たわけだが(ご親切にあなたのパパでしょと見せてくれた子がいた)なんの感情も出てこなかった。


先生と生徒が並んでいるだけ、それだけでよく話題に出来るものだ。


あそこの高校、サウスポートの生徒って程度が低いのねとタリアが横で言い、小声だったにも関わらずよく通る声のタリアが言ったものだから画像を見せてきたビッキーはもちろんその周辺にまで響いてしまったが、ジェニファーは全く気にならなかった。


だってどうでも良かったから。本当に。父がどこでどうなろうと別に。

そもそも父親がいるのが嫌で家から少し遠いセント・ファローまで通っているのに、父親の話題を出されても困る。迷惑だ。


「パパだけど、興味ないから」


そう言ってやるとビッキーは自分のグループの子となにかこそこそ話してからいなくなった。

出っ歯のビッキー。人の噂話ばかりしてるから歯が出てくるのよ。

ジェニファーは自分で笑えてきてすぐにタリアに言った。タリアにも大うけで彼女はしばらく笑っていた。

彼女は歯並びが綺麗で笑顔がすごく可愛かったから、ジェンはタリアを笑わせるのが好きだった。


だから帰り道で、いつもの笑顔を封印して、パパとどうなってんのと真面目な顔して聞いてくるものだからジェニファーはびっくりした。


「あんたの真面目な顔初めて見たかも!」


「もうジェン!こっちは真剣に聞いているのに!」


真剣といいつつ唇の端がすこし上がっている。猫みたいに。きっとタリアのことを知らない人は真面目な話をしていてもふざけていると勘違いするかも。

ジェニファーはそんなことを思いながら覚えている限りの父親のことを、話そうとしたがなにも出てこなかった。


「家庭内別居みたいな感じかな」


「マジ?」


「子供のときどう接したか覚えてないのよ。気付いたらパパは毎日忙しい、仕事を家に持って帰ってはパソコンの前、休みはいないか部屋にこもりっぱなし。わたしはママと出かけたり遊んだりした記憶しかないの」


「家にいないときはどこ行ってんの?パパは」


「さあ?ずっと昔にガレージで薬莢を拾ったことがあるからハンティングでも行ってるのかも。ポートタウンに昔っからいる人は今はなき森で鳥かアライグマか鹿なんかを撃ってたとか言わない?隣んちのジジイも見せびらかすようにでかい猟銃を庭に置いてたりするからうんざりよ。パパの場合は、今はもう知らないけど。わたしが起きる時間にはいないし。帰りもいつも遅いもの」


「アレがダメになってるから大きい銃で自慢したいのね、そのジジイは」


「タリア!真剣だったの一瞬じゃない!」


二人は笑った。いつものように。二人ともなにも疑うことなく信じていた。自分たちの日常を。

おばあちゃんになっても二人仲良く笑っていられる。そう信じていた。


「一度だけ、聞いたことがあるの」


「なにを?」


「勉強」


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