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ルーシー④

ルーシーが、小さな、しかしよく通る声で。自分の足元に向かって吐き出した。


「わたしは勉強をしていただけです、それでもわたしが悪いんですか?わたしはなにもしていないのに」


「誰もあなたが悪いとは言ってないのよルーシー」


ただ軽率なだけ、そう言いかけてハンナは言葉を飲み込んだ。

思ったことをすぐ口にする癖は治りようもない。


「でもわたしにもその人たちと同じように注意してるわ」


そう感じるとルーシーは言い、下唇を噛んだ。

悔しかった。こんなの屈辱だ。


先生たちになにも迷惑をかけず、ずっと良い生徒でいて授業もちゃんと聞いたし成績だって悪くない。授業中喋ったり眠ったりもしないのに、そうじゃない生徒と同じ扱いなんて酷い。本当に酷い。

真面目にしていたのがバカみたい、真面目に生きるのって本当にバカみたい。


ルーシーは鼻の奥がつんとしてくるのがわかった。我慢したけどダメだった。涙が出てくる。


「画像を見ていた生徒にはもう注意をしてある、ええと、誰だったかな」


「校長」


「名前は?なんだった?」


「……ドリー、キム、サマンサです」


ハンナは一瞬顔をしかめ校長を見たが、すぐに諦めた様子で名前を出した。知られたら都合が悪いのだろうか。

加害者を庇う精神がジョージには全く理解出来なかった。


「彼女たちも反省しているし、画像がこれ以上出回ったともいっていない。これをここで消して、この騒ぎはおいまいにしよう、いいね?」


「資料室には、行ったらいけませんか」


声が少し震えてしまい、ルーシーは情けなくなった。

なにもしていないのに、これじゃ反省してるみたい。


「今はやめるようにと言ったはずだよルーシー、いいか君が悪いんじゃない、でも刺激するような行動は控えなければ……頭のいい君ならわかるだろう。どう行動すべきかが。さあもうこの話は終わりにする、いいね?君はもう帰りなさい、わたしたちはもう少し話すことがあるからわかったねルーシー」


校長という権限に押され、ルーシーは部屋を後にした。


ジョージは落胆していた。彼女を守る先生になれなかった自分自身に。

もっと言い返す場面がたくさんあっただろうに、なにも言えなくなっていた。

しばらく静かにしていれば騒ぎが沈静化するのではないかという、校長の話に賛成している部分もあり、それがルーシーを裏切ったかのような気持ちになりなにも言えなくなっていた。


きれいごとだけの、問題には蓋をして隠してしまおうとする汚い大人だ。ここいいる全員、同じ。

決定的に違うのは性別くらいのものだろう。


ジョージは積み上げた小さななにかが崩れるのを感じていた。


「実は、問題はまだあるんだ、ジョージ」


すっかり髪がなくなった頭を額から撫でつけ、校長は言った。


「他校に回ってしまったんだよ、これが。成績を上げるための最善方法などどいう文章つきでな。誰がやったかはわからない。ネット上の付き合いを我々が把握するには無理がある。子供たちのネットワークを常に監視などできん。……セント・ファロー高校の先生から連絡が入ってな、生徒のいたずらということで収めている最中だ。だが生徒のどこまで広まったかはわからん。どういう風に受け止めているかもな」


「セント・ファロー高校?」


「ジョージ、君の娘さんがいるだろう」


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