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音哉⑦

野生のエルザという話を知っている?聞いたことない?まあいいか、人間がライオンを育てたって言う話なんだけどね、ああ実話だ。本にも映画にもなっている。

この間、その映画を作ったっていうドキュメンタリーを見たんだ。たまたまテレビでやっていて。

こういう風に撮影が行われたとか、ライオンのしつけが大変だったとか。

多分サーカスのライオンだったのかな?

俺はサーカスで動物を使うのも嫌いだから嫌な気分になったけどね。あんなの虐待と変わらないだろ。

ああそれで、そのエルザのやつを見ていて忘れられないシーンがあって。ずっと頭から離れないんだよ。

それは原住民、マサイ族って知ってる?

そうそう成人になるための儀式でライオン狩りをする、それだよ。

彼らが集団でライオンを狩っているシーンがあったんだ。

彼らは何人もで固まり、盾と槍を片手にライオンのオスとメス数頭に迫っていた。

槍が一本オスに向かって投げられたかと思うと次々にその体に突き刺さっていった。腹、手足、首、顔面。

ライオンは叫びながら倒れたよ。次はメスたちの番だった。

メスたちもオスと同様体中に槍を受けて苦痛のうちに死んでいった。

そして場面は切り替わって、今度は裸に葉を巻いただけじゃない服と帽子に身をつつんだ現代人が、飛びかかってきたライオンを銃で撃ち殺したんだ。

何発も銃弾を浴びせていた。

正当防衛とかなんとかそれなりの理由はあったかもしれないけど、殺したのは事実だ。


俺は思ったよ。


人間って生き物は言語や種族、生活環境に教養などが地域によっていくら違っていても残虐性はなにも変わらないと。

根本的なものは同じだ。

他の命を奪わないと気が済まない生き物なんだ。

進化しているのは手にしている武器だけだ。

遠い世界の話に思える?でもこの日本でも嫌というほど動物たちの死を感じとれる。

商品になっているだろ。毛皮のコート、バックに財布。剥製。

野生動物をペットとして飼いたいって思うやつがいるから輸入もされる。

そうつまりは欲しがる側がいるのが悪いんだよ。

さっきのエルザの話は狩猟目的で残念ながらここから取り締まりに協力することはできない。

だけど欲しがる側の、先進国という名の恐ろしい消費をする側の人間を直接減らすことは出来るんだ。

欲というのは強く支配力のある感情だ。

多分、命の心配がない世界で暮らしているからこそ余計その欲が生まれるんだろう。

食べ物の心配、寝床の心配、教育や生存する上での環境の心配をしなくていい。与えられる社会にいるからこそ自分を飾り立てるものが欲しくなるんだ。

それは他の生き物の亡骸だということに欲しがる側は気付いていないだろうな。

きっとただのモノにしか見えていない。

みんな可哀想だ。無自覚な殺戮者だ。

俺は自分にこんなについてきてくれる人たちがいて嬉しいよ。俺が連れて行かなければ彼らは年を取って死ぬまで消費という名の虐殺を続けていくんだ。

どこかで止めなければとずっと思っていた。全ての人間を連れて行く力はないけれど。

ほらマザーテレサだって言っていただろう?まずは目に見える者を救え、だったかな。身近な者だっけ?

まあどっちでも同じことだ。

重要なのは自分が出来る範囲のことを、手を抜かず精一杯やり遂げることだ、なあそう思わないかちづる。




俺は間違っているのか?


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