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ペギー③

ペギーのいうとおりだ。アーサーはこれまで何十頭と保護した動物を野生に帰している。なにもハニーが初めてじゃない。

ただ、今までよりうまくいってないだけだ。


「ハニーが親離れできそうにないの?あなたが子離れできないのかしら。それとも両方?全く困った恋人たちね」


アーサーは苦笑いし、首を傾げて見せた。


本当にどっちなんだろうな。自分はヒョウとしてのハニーの生涯を潰していないか。だが今更どこぞの野に放し置いていくなど、そんな無責任なことが出来るものか。


「そういえば、また本部に日本から寄付金が送られてきたの」


アーサーの思考を打ち消したのはペギーの少しいぶかしむような声だった。


「ずっと同じ、このキタニさんという方から……もらい過ぎといっていいくらいの額なのよ」


「きっと金が余っているんだろう。いい使い道じゃないか」


「こんなに悪いわ」


「知っているかペギー、日本人というのは個人の資産額が最も多いそうだ。ありがたくもらっておけばいい。それより君のところにちゃんと分配されているんだろうな?」


「ええそれは大丈夫。各地の保護センターにきちんと振り分けられることが寄付金を使用する際の条件だもの」


「そうか。それはなによりだ。人間という種には掠め取りのプロがいるからな」


「私たちはちゃんとルールを守っているわよ」


心外だというようにペギーは笑った。

なにも知らずに日々を生きている者の笑顔だった。

いずれその多額の寄付は途絶えるだろう。それは仕方のないことだ。

我々は行動を起こさねばならないのだから。



「またくるよペギー、元気で」


「次こそはおめでたいニュースが聞きたいわアーサー」


ペギーに見送られアーサーは彼女の保護センターを後にした。しばらくハニーのことを考え、それから音哉とジョージのことを考えた。そしてジェイコブ。


皆それぞれうまくやるだろう。きっとアーサーがいてもいなくても。アーサーは彼らの素質に気付いただけで未来までは決めれないのだから。

なにが起こるか見当がついていてもそれはアーサーが目論んだわけではない。

 







アーサーは森へ行く。ハニーからのざらざらとした抱擁を受け、一緒に狩りに出かける。ハニーが獲物を食べる横でアーサーはハンターの頭を打ち抜く。アーサーがパソコンに向かっている横でハニーは毛づくろいをする。



〈全ての原動力は怒り、怒りの感情を忘れるな〉



アーサーは音哉のこの歌詞がとても気に入っていた。

いつか、自分の目で、歌う彼の姿が見たいものだと思ったが、それは一生叶わないということを誰よりも知っていた。


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