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ジョージ⑥

原油を巡る各国の問題を口にしながら、ジョージは教室を見渡す。


眠っているジーンとカメリア。携帯端末を一応教科書で隠しながらいじっているキムにマイク、ビリー、あとサマンサにニック。

堂々と取り出して使っているのはブライアン、スタンそれからキャロラインにアビー。頬杖をつきぼんやりしているマイラ。コミックを呼んでいるデイブ。髪の毛をずっといじっているマーサ。ノートに落書きしているアリッサ。お喋りに夢中なエイミーとローズ。

ベンにジェイソンにモーガン、ダラス、オーティス。

こいつらは来てもいない。アメフトバカだ。放課後に備えてどこかで寝ているのだろう。


話を、話の意味をちゃんと理解して聞いているのはルーシー。ルーシー・ブルーリーだけだった。


相手に目線をしっかりと合わせ、ノートを取りつつ話の内容を把握している。

評価のためにだた書き写している優等生ハワードとイアン、ウェイン、ミラとはワケが違った。


彼女は自分の話を面白がって聞いている。


ジョージは時折ルーシーを見た。彼女もこっちを見ていた。

まともに話を聞いている子がいるだけで、こんなにも授業に対してやりがいが出てくるのもなのかと、ジョージは三十年以上教師をやっていて今更のように感じていた。

放課後彼女はまた来るだろうか。なんの話をしようか。


ドリー・エリオの視線には気がつかなかった。

 








放課後、資料室以外に行くのは久しぶりだった。


図書室。

好きな場所ではあるが、明るすぎるし絶えず人が入るため堂々とアーサーのサイトを見ていられないから積極的に来たことがなかった。


ルーシーは本をたくさん抱えて先を進んでいる。少し後ろを歩くジョージの手にも本。


ジョージいわく返し忘れて資料室にたまってしまった本の山の一部であり、ルーシーいわく読みたかった本がやっと見つかった、もしかしたら自分以外にもこの中の本を探しているかも一度戻さなきゃ、といった結果の行動だった。

一度全部返却しましょう会だ。


「申し訳ないが図書委員にお手伝いを申し込まないかい?全部返すとなると最低もう二回は往復しないと」


「わたしがそうなの」


「おっと、長らく失礼してしまった」


ルーシーは笑った。世界に散らばる変なトイレというタイトルの本を片手に。


「先生、こんなの読むんですね」


「トイレにはそれぞれの国が発展した歴史と嗜好が詰まっているからね」


「変なの」


笑いながら本棚の奥に消えるルーシーの後ろ姿を少し見つめてから、ジョージは自分が手にしている本を戻しにかかった。


ポルポト時代におけるカンボジアの現状、イギリス犯罪史、アマゾンで発見された新種やアフリカの疫病についてまとめた本に独裁者の手記。

絶滅種図鑑、銃社会への警告、地理政治学書に途上国の宗教戦争、パーム油がもたらす恩恵と破壊、割礼という文化と犠牲、アメリカ戦争大辞典なんてのも。


ことわざ辞典や中世の雑学書以外はなんというか、全ての原因は人間の愚かさ、で片付いてしまう内容だとジョージは思った。

本の表紙を見ているだけで溜息が出てしまう。

やはり、一度大幅に減少するか滅ぶべき種ではないのかと。


「先生」


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