ダニー
後部座席に今日一日の成果をこれでもかと積んだため、少しの段差でも耐え切れずに古いジープは悲鳴をあげる。
ダニーはそのたびに舌打ちをした。
名前も種類も把握出来ちゃいない。
多分ガゼルかインパラか。
要は小さいシカみたいなやつが数頭、ダニーと一緒に揺られていた。
こいつらはわりと簡単に仕留めることが出来る。草を食うことに夢中だからな。食ってクソしてヤッて寝るだけだ。何匹減ったって構うものか。
人間だって同じようなものだが、それよりも。
そんなことよりも惹きつけられる行為がある。
鈍く光るライフルに触れながら、これは人間の特権だとダニーは思った。
命を奪うのは何よりも楽しい。
ダニーは大抵、仕留めた獲物を捨てていく。
死んだ動物に興味はないからだ。
だが今回は違った。たまたま仲良くなった国立公園のスタッフが、保護しているライオンだかヒョウだかに食わせる肉が足りないとぼやいていたため持ち帰ることにしたのだ。
これでも保護区のレンジャーをしている。密猟者に対抗するため、銃を所持するのは当たり前だ。
この獲物はパトロール中にこの状態で見つけたと言えばいい。
怪しまれることはないだろう、殺しすぎているということを。
タグのない動物を撃ち、檻の中の動物のためのエサを集める。
なんとも矛盾した生活だなとダニーは自分を皮肉った。
まあなんにしろバレなければいい。
保護施設まであと少しというところで、大きな揺れがダニーを襲った。
天井に派手に頭をぶつけ、視界がぶれる。
ジープが石でも踏んづけたのか、そう思いながらコントロールを失い蛇行するジープをなだめるようにハンドルに手を滑らせ、何度もブレーキを踏みなんとか車を止めた。
すぐに車から降り、後輪を睨んでダニーは悪態をついた。
見事にパンクしてやがるクソッタレ!
ダニーは後輪を蹴飛ばし、空を仰ぐ。
日が暮れる前に戻らねえと。歩いていくのも、このままジープの中で夜を明かすのも危険すぎる。ライオンやハイエナの餌食になるなんてごめんだ。
スペアタイヤに触れながら、ダニーはふと、自分が今まで走ってきた道を見た。砂ばかりで石など一つも見当たらない。
一体なにを踏んづけやがったんだ?
なんだ、何かおかしい。
突然激しい衝撃が体を襲い、ダニーはなすすべもなく車体にぶつかりそのまま地面に転がった。
頭が爆発したかのように熱く、目がチカチカする。手に力が入らず起き上がれない。顔を何か温かいものが伝わっている。
血?まさかなんで、なにが俺に?
ダニーは動かせる目だけキョロキョロさせ周りを見た。
ジープに積まれたシカと目が合った。
真っ黒な目と。
そこでようやくダニーは気がついた。自分がそのシカと同じ目にあったということに。
けれど、すべてはもう手遅れだった。




