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悲劇(前編)
あの事件は僕から「すべて」をうばった。
あの事件の後、僕は僕と似たような境遇を持つもの達と多感な時期を過ごした。彼らは強かった。優しかった。何より彼らといてとても楽しかった。
僕らを育ててくれた人達も皆優しかった。
ずっとこんな日々が続けばいいと思っていた。
僕がここ新田南孤児院に若干8歳にして容れられる
こととなった原因は当時世の中を震撼させた
連続殺人犯、通称「ageha」にある。
僕は普通のサラリーマンの父を持ち、専業主婦の母を
もち、1コ下の妹をもった平凡な家庭でそだった。
決して裕福ではなかったが、家に帰ると母が玄関まで迎えにきてくれて、父が帰ると4人で食卓を囲んで、夕飯をたべる。只それだけが、とても幸せだった。
そんな中、事件は起こった。