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第三十三章 予兆

「見て! イルカだよ!」

 陽を浴びて、髪が銀色に輝く才賀ポラリスが、幼い声をあげた。

 十頭ほどのイルカの群れが、船と並んで青い海原を泳いでいる。

 これは貴重な光景だ。

「エメを呼んで来なきゃ。イルカを見せてあげたい」

「草刈っ」

 駆け出す俺を、渡良瀬少尉が呼び止めた。

「はい」

「エメのことを本当に……、大切に想っているんだな」

 彼女はしみじみと口にした。


 エメラダとイルカの群れを鑑賞する。

 コトミは……。

 残念だが諦めてもらう。

 実桜ポラリスに見つかったら、一大事になりそうだ。

 到着した島で思いっきり遊べばいいのだ。

「最高。声をかけてくれてありがとね」

 俺のささやかな贈りものに、彼女は心を打ってくれた。


「ねー、お兄ちゃん、銃貸して」

 才賀が瞳を光らせて、俺にハンドガンをねだる。

 俺はこの旅に銃を携帯していた。それはいつ何時でもエメラダを守るためだ。

 才賀は目ざとかった。

 いや、ちょうど銃に興味をもつ年頃だろうと思い、仕方なくセーフティをかけたまま手渡した。

「やったー。すごい。重いね。この銃の名前は?」

「シグ・ザウアー」

 エメラダからの大切な贈り物だ。

 それを気安く子供の手に触れさせてもよかったのだろうか。

「ヴァン! ヴァンヴァーン!」

 才賀は唾を飛ばしながら、イルカの群れにトリガーを引く。

 その行為に俺は寒気を感じた。

 もちろん弾は発射できない。

 ただ、イルカをモンスターか何かに見立てて、銃を向けるという仕草が異様に不気味だ。

「おもちゃはママに買ってもらいな」

 俺は銃を取り上げた。

 寒気が続いている。


 これは……、デスフラッグではなかろうか。

 俺の目の前に、青ざめた面持ちのエメラダが立っていた。

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