表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/38

第二十三章 抗いのほむら

 日曜日の昼過ぎに、エメラダからの呼び出しがあった。

 ブレスト・ドニセヴィッツの運転する中型のバンは、渡良瀬ひとは少尉を迎えるため、スピードを出して都道を走っていた。

 後部座席で、俺は使い慣れたベレッタと、新しいシグ・ザウアーの安全装置を解除した。

 助手席には迷彩服のエメラダがいる。

 今日は戦いがありそうだ。

 

「ひとちゃんは友達の結婚式にでているって」

「えっ、渡良瀬少尉が結婚?」

「どう聞き間違うのよ!」

 おどけた俺に、つっこみが入る。

「エメは、渡良瀬本人の結婚式のときでも、容赦なく呼び出しかねないからな」

 ハンドルを握るブレストが笑って言った。


 せっかくのプライベートな時間を奪われて、すこし少尉が気の毒に思えた。しかし、彼女は軍人だ。エーストにいるならば、それは織り込みずみのはずだ。


「えーと、ミッションを説明するわ。わたしたちは、東京地下空間へ行きます。普通の人は入れないところね。簡単に言えば、そこに潜伏する敵グループを掃討するの」

「戦力は足りるのか」

 運転をしながら、ブレストがたずねる。

「ひとちゃんを加えれば、なんとかなるわ。ひとちゃんと合流したら詳しく説明するから」


 東京に巨大な地下空間があるというのは聞いたことがある。

 お偉方えらかた専用の秘密の移動通路、旧軍用通路。

 建設したが、使われなかった地下鉄線サブウェイ

 災害用・避難シェルター、大洪水をため込む治水施設……。

 

「ねえ、ムツキ。地下空間って、わくわくするでしょ」

 後ろを向いて身を乗りだす彼女に、俺はうなずきで返した。

 

 俺はエメラダについていく。

 能力について追求していくと決めた。

 地下空間で命を落とすことなんか、ありえないんだ。


 赤坂の繁華街の道なりで車が止まった。

 通りには、赤いキャミソールドレスの女性がいた。

 スカートの股下が長く、引き締まった腰つき。背丈をより高らかにするハイヒールを履いている。彼女から恒星の紅焔プロミネンスのような、危機的な輝きが放たれていた。


 彼女は走って来たためか、肩で息をしている。

「渡良瀬。そんな格好でいいのか!」

 車のウインドウを開けて、ブレストは少尉に注意した。

「はあ、はあ。急に呼び出されたから」

 ぶっきらぼうな、彼女らしくない答え方だった。


「ひとちゃん、ゴメン。迷彩服を用意してないわ……。戦いは、わたしたちがサポートするから」

 エメラダは手を合わせて謝る。

「お嬢様が銃を握る?」

 渡良瀬少尉は緊迫した面持ちになった。

「うん。装備はシグと、フランス軍採用のサブマシンガン。ちゃんと射撃訓練したよ」

「今回は、どうしてもやらなくてはいけないミッションですか?」

 少尉は念を押すようにエメラダと目を合わせた。

「これから説明するけど……」

「今回ばかりは……、やめたほうがいいです」

 少尉は静かに警告を発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ