第二十二章 エーストにいる理由
真木アオイは質問を続けた。
「エーテル・ストライクは、どんなことをやってるの? けっこうキツイってのは、なんとなくわかるけど」
少なくとも、エメラダ・ポラリスを護衛するためだけのチームでない。
作戦はエメラダが企画する。でも、その目的はなんだろう。
俺はしばらく黙考した。
そうだ。
能力だ。
エーストには、俺と同じく能力を持つ者が三人いる。能力者は、己の能力について探求したいと思っている。そのために、エーストが存在するのだ。
「睦月がエーストにいるのは、エメラダが理由なんでしょ? エメラダが好きなの?」
「嫌いじゃない」
深く考えずに、口から出た。
俺の答えに真木の口もとが緩んだ。
「じゃあ好きなんだね」
「そうだって。好きだからだよ。十分な理由だろ」
「好きって愛情的な意味だよね?」
「だからそうだって」
「そうかあ。そうだよね。基地にいたときから二人はうまくいくなーって思ってたし」
「そう見えた?」
「うん。顔赤いよ」
「うるさい」
俺は顔を横にふせる。
「睦月は、すごいよ。だって、あのエーテル・ストライクなんだもの!」
それは俺に能力があるからだ。
「あーあ、エーテル・ストライクは、雲の上の上だよ。ホントに」
南国からしばらく離れて、肌が白くなった彼女は、頬を染め、羨望のまなざしを送ってくる。
真木にこんな目で見られたことは、いままでなかった。
「いいことばかりじゃない。エーストに入ったから、テロリストに目をつけられている。俺の首に懸賞金がかかっているかもね。たとえばお前みたいなのが襲ってきたり」
「ぶはは」
真木は眉毛をハの字にして笑った。
懐かしい感覚だった。
また、真木や青山たちと一緒に訓練生活を送りたくなる。
「エースト。あたしが入れるようなところじゃないなあ。あたしと、睦月。実力に差なんてあるのかなと思っていたけど、やっぱ睦月はあたしと違うね」
真木だって、十分に活躍できる場所があると思う。あの特専を立派に修了したのだ。
「あたし、【渡良瀬ひとは】と連絡をとっているんだ。ひとはさんは悩んでいるみたい」
俺の眉間がピクっと疼いた。
「俺に言えることか?」
「いや。やめておく。でもね、ひとはさんが言ってた。睦月は超能力を使っているみたい。エメラダも危険を予知して動いたって。これ、どういう意味かわかったわ。睦月さあ、あたしの追跡に気づいていたし、ファーストアタックもかわしたでしょ? こっちがびっくりしたわ」
「訓練さ。お前もまだ訓練が必要だな」
「才能だと思うけどね」
渡良瀬少尉のことが気になった。
彼女にデスフラッグの能力はない。
少尉はなぜ、エーテル・ストライクにいるのだろう。
エメラダに気に入られた。それだけじゃないはずだ。
ほかに理由があるのかもしれない。




