第二十一章 真木の挑戦
「へへ、降参、降参」
仰向けのまま、俺に組み伏せられた真木アオイは、両手をぶらりと伸ばしていた。
「真木! あのこんがり日に焼けていた、真木じゃないか」
「そうそう。あたしあたし。でさあ。睦月。いつまで上に乗ってんの?」
「すっ、すまん」
俺は彼女の体の拘束を解いた。
彼女のフードつきのパーカーにTシャツ一枚、ハーフパンツとスニーカーという格好は、やはり少年らしくみえる。
「久しぶりだねー。草刈睦月」
パーカーを脱いで砂を払う彼女は、髪を伸ばして、肌は白くなっていた。基地にいたときと雰囲気が違う。
「真木。俺を狙ったのか?」
「そう。睦月の住所と連絡先は、特専のみんなに知らせてあるでしょ?」
「うん。みんなで集まれるようにね」
「あたしは草刈睦月をやっつけて、名をあげてやろうと思ったわけ。その実力で、どこかのPMCに入れたらいいなあって」
なんて無茶苦茶な論理だ。
「国防軍は?」
「あたしはね、軍には残れなかった。睦月が【やらかした】からだよ。みんな連帯責任を負わされてさ。だから働く所を探してんの」
乱れた髪をなでながら、あっけらかんと真木は言う。
胸が締めつけられた。
デスフラッグとはまた違う痛みだった。
特専のみんなは、責任を負わされたって?
青山シゲルもか!
みんなが、俺のせいで進路を絶たれたのなら、俺は謝っても謝りきれない。
俺は真木の両肩をがっしり掴んだ。
「真木。お前の腕は確かだ。どこかいいPMCを、紹介してもらうよう、エメラダに頼んでみる」
「らっきー。じゃあ、睦月のエーテル・ストライクに入れる?」
それは、正直難しいと思った。能力がないと厳しいのではないか?
俺の表情を真木は読んだ。
「ごめん。ウソ。連帯責任なんてないから。みんな、それぞれの道にすすんだよ」
真木はぺろりと舌を出す。
「ほんとにウソだったの?」
安堵感とともに、軽く真木をど突きたくなる衝動が走った。
「特専が終わったら、あたしは軍をやめたんだ。てっとり早く、大金を稼ぎたかったんだよねー、それにはPMCが一番わりがいいんだよね」
「金かよ。PMCは危ないぞ」
「睦月はいくら稼いでいるの?」
今、コトミが俺の家で報酬の札束を数えている。額を知っても教えられない。
「秘密」
それを聞いた真木は眉をしかめた。




