第十七章 Flag scope
「ドニ!」
現われたブレスト・ドニセヴィッツは、地面に置いて撃つタイプの重機関銃を、腕に抱えてぶっぱなす。
「なんて怪力だ」
彼は背中にスナイパーライフルも携えている。
「おらおらおらおらあ、おらおらおらおらあ」
薬莢がじゃらじゃらと床にこぼれていく。
アサルトライフルの集団は即座に掃討された。
「ブレスト! 助かった。すごい力だ。もう店がメチャクチャだ」
「仕方ない。草刈。ベレッタでなくマグナムを持てよ。威力が足りないぞ」
彼は重い物を担いだ上肢をぶらぶら伸ばす。
女性陣は無事か?
渡良瀬少尉はテーブルの下にもぐり、腰を抜かした小日向ひびきを抱きかかえている。
エメラダは階段の下に身を隠し、敵の視角から逃れていた。
「外にも俺たちを狙っているやつがいるぜ」
「えっ、どうしてわかるのです?」
俺はブレストにあえてたずねる。
「わかるだろ」
彼は大きな手のひらを俺の頭に載せた。
頭が痛い。
いまだデスフラッグは降ろされていない。
「……はい」
「よし」
ブレストは手をどけた。
「草刈睦月。店から一緒にでて道を確保するぞ」
ブレストは重機関銃をホールの端に蹴り捨てて、愛用のスナイパーライフルを手にした。
デスフラッグの能力を活かして状況を打開しよう。
店の外に顔を出すと、さっそくデスフラッグ30%が発動した。
危険が迫る方向を察知できた。街の通りの斜め向かい、ビル屋上の看板にスナイパーが隠れている。
「ブレスト。あそこだ」
俺が指で示すと、彼はスコープを覗いてライフルを発射した。
弾は看板を貫通し、命中した。
次は、大型書店の屋上からこちらを狙っている奴がいる。
「ブレスト。あそこはどうだ」
「いるな」
ヒット。
俺が狙われる位置にわざと立つと、デスフラッグが作動して、その原因の源である敵の居場所を知ることができた。
こうして、建物や屋上に隠れ潜む計四人のスナイパーを排除した。
「オールクリア」
ブレストはライフルのスコープから目を離した。
「エメ、渡良瀬少尉、ひびきさんも大丈夫だな」
俺は店内にいる彼女たちを呼ぶ。
エメラダと少尉は、意識が朦朧としているひびきに肩を貸している。
「ひびきさん。この場の収拾は、あなたに引き継いでもらうね」
エメラダがひびき警部の片耳でそっとささやいた。
「むひゃあ、もう、あんたら全員逮捕だからね」




