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とりあえず、正々堂々と旅をする。

-勇者沈黙・魔王懇願-


「よくぞ来た人間どもよ!今ならば世界の半分をお前たちに・・・」

「魔王の娘よ!そんな事はどうでもいいから俺の物になれ!そうすればこの場は俺に免じて引いてやろう!」

・・・・・・。

瞬間、あたりが凍りついた。

お約束の口上をそんな事と切り捨てられた魔王ですら口を開け呆然としている。

勇者は眉間に皺を寄せそれを掴むポーズで固まっている。

(おお、俺は今こんなにも注目を浴びている!勇者よりも目立っているに違いない!)

神官であり賢者と呼ばれた稀代の天才少女は、主よ目の前のおろかなる者に鉄槌を与えることをお許し下さい。浮気は極刑。地獄なんて生ぬるい・・・・などと物騒な事を呟いている。

格闘家はようやく我に返り笑いを堪えるのに必死なようだ。

そのある意味、静寂というか均衡を破ったのは魔王の娘だった。

「本気か?人間。我は魔王の娘だぞ。」

「おう、何度か戦ったな。」

「戦った・・・のか?いいように私は遊ばれていた気がするのだが。」

「何を言う。そこに理想の肉体があれば抱きつくのは当然だろう?」

「そんなに私が好きか?」

見た目、18歳くらいの美少女系少女は紅く妖艶な髪をふわりとなびかせ目の前に降り立つ。

「好きだね。ちなみに、俺が振られた場合はこの場の全員に対して本気で八つ当たりをしようと思っている。」

「・・・あまり聞きたくないのだが。どんなだ?」

勇者が固まったまま問いかけてくる。

ふむ。と考える。

「15分後ナレーションが入るならば、まるで初めから魔王など存在しなかったかのようにこの地域一帯は生き物が存在する事ができない砂漠地帯であったとかはどうだろう?」

「・・・・ぷっ。」

魔王の娘は思わず噴出し、男ならば誰もが惚れるであろう笑みを浮かべた。

「面白い冗談ね。気に入ったわ。」

(いや、あれは本気だ。)

勇者は蒼白になっていた。

(我々すら巻き込むとかどんだけ傍若無人なんだあいつは。よくあんなやつに惚れたな賢者様よ)

格闘家は身震いをして賢者へ囁く。

(ねえ、どうしたらアイツをヤレルかしら?今度という今度は・・・)

違う意味で震えている賢者。

「いいわ。じゃーこうしましょう。私と貴方で世界をまわりましょう。人間界と魔界両方を旅行しましょう。新婚旅行だと思えば楽しそうですし。人間の真似事も一度はしてみたかったしね。それで、我々は共存できるか確認しましょう。」

「お、おい。それはなんと言うかお前のお母さんに申し訳ないというか私が殺されてしまうとうか。」

我に返った魔王が娘を説得する光景は何と言うか・・・どこの家庭も一緒なんですね。

「大丈夫。お母様なら喜んで下さると思いますよ。一年くらい城を空けます。で、無事一年経って笑顔で戻って来たのなら、この場で結婚式をあげるなんてどうかしら?」

「う、うむ。」

(ひゃほーっ!)

顔に出さず心の中で叫びまくる。相手は人間ではないがそれがどうした!

ボン、キュ、ボンで年下とか万歳!!

(う、うむとか言ってるが、いいのか勇者。あいつ内心鼻の下伸ばしっぱなしだぜ。)

(よくない。よくないが。あいつがいないと魔王と戦っても。)

(勝率は3%希望はあるが絶望のが大きいわね。)

「では、さっそく。」

俺は魔王の娘を抱きかかえると魔法を唱える。

「お父様、一年間娘さんをお預かり致します。」

「誰がお父様だ!人間風情がー!!」

「あぶないな~。あたったら娘さん傷ついてしまいますよ?お父様。」

「でも、守ってくれるんでしょ?ダーリン。」

「当たり前じゃないかハニー。」

「ぐおー!!殺す!絶対に許さんぞー!」

魔王の絶叫が城を振るわせる。

「では、皆さん。ごきげんよう。バニッシュ。リターン。」

姿隠しの術と移動呪文を連続で唱えて俺たちは魔王の城を後にしたのだった。

「ゆ、勇者よ・・・取引だ!」

「な、なんでしょう。魔王。」

「娘を取り戻してくれ。我々も全力であいつを始末するが、ここは協定を結ぼうではないか。」

魔王は勇者に提案をする。

「協力するのならば半年・・・半年は人間界を襲わないと約束しよう。もし、半年の間に娘を見つけ連れてきてくれるのならば、お前らの余生まで・・いや、おまけだ300年は人間界に危害を加えない事を約束しよう。あいつを生きたまま連れてきたら、人間界の一部については一生の安寧を約束してもよい。もし一年経過した場合は世界を無へと返してやろうぞ。」

「・・・わ、わかった一先ず王に報告しよう。」

「今すぐお前ら共々人間どもを皆殺しにしてやりたいが、が、我慢しよう。」

「・・・・・。」

こうして、第一次魔王討伐は思わぬ方向で中止となったのだった。

時期は4月。タイムリミットは後6ヶ月・・・・。





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