第三話
現場にたどり着いてみると、すでに辺りには規制が敷かれ、二人の車は検問の簡易ゲート
をゆっくりとくぐり、二人と車のIDが照会された。
「この分だと、鑑識もご到着だろう。俺達の仕事はあまり残ってないな」
フレッドの推測。
「結構急いだんだけどね」
とリー。
「まあいい、被害者を見せて貰おうぜ。・・・ええと、そこごめんよ…ガイ者を…ここらじゃ
ブッダって言うのかい?見せてもらうよ」
死体を覗き込んだ、フレッドの表情が、やや曇った。
「身元判明だ……」
「何と素早い」
「茶化すな。首絞めるぞ」
「すまん」
「知ってる顔だ」
「・・・・・・」
「こいつは、ヒル・ロボスだ。何度か世話してやった、ケチな売人だ。こんな所に商売に来
たんだとしたら、馬鹿な奴だ。ハハハ…」
「つらいか」
「ハイスクールでは有能なバスケの選手だった。卒業後、俺はポリス・スクールに行き、ヒル
の事は、よくは分からなくなってた。てっきりプロになるもんだと思ってた。俺が警官として
この街に戻って来たら、ヒルはチンピラになってた。商売で捕まって、手錠を掛けられる時、
何か悲しいような、それでも可笑しいような、愛想笑いみたいのを浮かべてた。俺はただ、黙ってた」
「そんな場面じゃ、誰だってお喋りにゃならないさ」
「黙っていた・・・もしかしたら、話し合って、彼の人生を変えれたかもしれないのに、ただ
、黙って、微笑んで、いいオマワリを演じてた」
「お前のせいじゃ無いって、フレッド」
「俺は、学生時代、奴に嫉妬してた」
「誰でも罪をしょっているんだ。気にするな」
「俺は今までずいぶん死体を見て来た。綺麗なのもあれば、ひどいのも、生きてる様なのも
あった。だが、こんなに気に喰わないのは初めてだ。俺は、こいつの犯人を、追っかけたい。
十字架など、犬に食わせろ」