第25話 『最終決戦Ⅲ』
「おらぁぁぁぁぁぁ────!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉ────!!!」
互いの咆哮が重なる。
破滅の魔王の繰り出した拳を腕でガードする。
凄まじい威力だ。
腕が痺れ、骨が軋む。
破滅の魔王はアイテムなんぞ使わなくても十分過ぎるほどに強い。
俺は奴の顔目掛けて蹴りを連続で放つ。
いくつか防がれてしまうが、良いのが何発か入った。
脚が伸び切ったところを掴まれてしまうが、俺は体を強引に捻って軸脚で蹴りを繰り出す。
破滅の魔王の顔面にクリーンヒット。
鮮血が吹き出す。
「ぐおおっ!」
倒れた俺はすぐに立ち上がり、追撃をしようとする。
だが、よろけていた破滅の魔王はすぐさま体勢を整えて俺の腹部に拳を叩き込んで来た。
突き抜ける衝撃。
賢者の強化魔法が無ければ確実に内臓が潰れていただろう。
怯んだ瞬間を狙い、破滅の魔王は先程と同じ場所に膝蹴りを入れてきた。
「がはっ」
腹から込み上げてきた血を吐き出す。
口の中が鉄臭い。
「おら! もう一発ぶち込んで貫通させてやるよぉぉぉぉぉぉ────!!!」
また、同じところに殴りにかかる。
来る場所が分かっているのなら止めることなど造作もない。
一撃をガードした俺は、奴の腕を掴んで思い切りこちらに引き寄せる。
そして、迫ってきた顔目掛けて俺は頭突きを喰らわせた。
「ブハッ!」
「──っ」
鮮血が舞い散る。
俺と破滅の魔王、両方の鮮血だ。
クソッ、なんて奴だ。
頭突きの直後に俺は肘の一撃を受けてしまった。
あまりにも早い打撃は鋭く、剣で斬られたような傷が頬に刻まれた。
一旦、距離を取り次の攻撃へ転じる。
瞬時に奴の懐に潜り込み、顎めがけて拳を突き上げた。
跳ね上がる顔。
ガラ空きになった腹に拳を連続で叩き込む。
「ぐうぅぅぅぅぅぅ────!!!」
限界まで腹筋に力を入れて耐えた破滅の魔王は、俺が息継ぎをした僅かな隙を見逃さない。
俺の顔面に拳がめり込む。
鼻がへし折る感覚があった。
「がっ……」
破滅の魔王が繰り出す凶拳が全身に襲いかかる。
肋骨が砕け、内臓が破裂した。
吐血が止まらない。
さっきより威力が上がっている……!?
「調子に乗るなっ」
視界が混濁しだすが、無視して破滅の魔王の腕を掴み膝で叩き折る。
追撃でお返しとばかりに内臓破壊をお見舞いしてやった。
破滅の魔王は血を吐き出しながらで狂喜乱舞しつつ、全身に力を込めた。
「こんなに楽しいのは初めてだぜぇぇぇ────!!! なぁ、勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!!」
先程の怒りなど忘れたかのような喜び方だ。
奴はこの戦いを心底楽しんでいるのだ。
その気持ち、痛いほど分かる。
「ああ、俺も楽しいぞ」
「だよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!!」
俺と破滅の魔王は再び拳を交え始める。
全身の血が沸騰したかのように熱い。
相手の拳を避けた瞬間に吹き抜ける風が心地良い。
舞い散る鮮血が果てしなく美しく見える。
拳が、脚が、相手の体を破壊すると恍惚感に満たされる。
自分の体が破壊されると訳の分からない何かが脳から分泌される。
それが恐ろしいくらいに心地良い。
命の取り合い。
純粋な殺し合い。
だというのに、なぜこんなにも楽しいのだろうか。
破滅の魔王は笑っている。
いや、きっと自然とそういつ表情になってしまうのだろう。
分かるぞ、俺もこのニヤつきを止めることができない。
×××
それから、どれくらいの時間が経っただろう。
俺と破滅の魔王は互いに一歩も引かずに殴り合った。
全身血だらけ、至る所が骨折、腫れていない所を見つけるのが困難なほどだ。
まさに、満身創痍。
それでも、俺と破滅の魔王は殴り合いを止めなかった。
繊細さも派手さも何もない、酷い泥試合だ。
もはや、ノーガードだ。
防ぐほどの体力がない上に、攻撃する以外の思考が削ぎ落ちているのだ。
「はぁ……テメェ……いい加減にくたばりやがれ……」
「それは無理な、はぁ、相談だ」
二人同時に動きを止める。
直感で分かった。
次の一撃で勝敗が決まる。
そのために最後の力を溜める。
刹那の静寂。
先に動いたのは破滅の魔王だ。
「死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────っ!!!」
痛々しく皮は剥がれ、血が滲む拳が眼前に迫って──。




