第24話 『お膳立て』
俺、賢者、エメリ、シーフの四人は玉座の間から少し離れた通路にて最終確認をしていた。
「──以上だ。不測の事態になったら各自で判断しろ」
「分かった」
「うん」
「りょーかいっす」
エメリが不安そうな表情で俺を見ているのに気が付いた。
「なんだ?」
「あ、えっと……ブレイブがなす術もなくやられた相手だからちょっと不安で」
「前回はカラクリを知らなかったからだ。今回は問題ない」
「でも」
「啖呵切って、真っ向勝負してたヤツがよく言う」
エメリは面白くなさそうに頬を膨らませた。
「だから、アレはなんか知らないけど急になったの」
「そういうことにしておく。安心しろ。今日はやけに調子が良い」
目覚めた瞬間から体調の良さを感じていた。
全身に力が満ち溢れている。
まるで、全盛期……それ以上に力を感じている。
これならいける。
「よし、行くぞ」
×××
玉座の間へ突入。
エメリの魔弾により玉座以外は壊滅的だ。
玉座に座り空を眺めていた破滅の魔王は俺たちに気付き、勢いよく立ち上がり歓喜に満ちた声を上げた。
「昨日の今日で来るとか良い度胸じゃあねぇかぁぁぁぁ────!!! 今日は容赦しねぇ、ガチンコだぁぁぁ!!! 一人残らず殺してやるよぉぉぉ────!!!」
賢者が錫杖を振るい、俺に身体強化魔法を何重にもかけ、エメリに攻撃強化魔法をかける。
俺は距離を詰める。
その後方、エメリが魔弾を作り出す。
高密度に圧縮された魔力が空気を軋ませる。
「そいつかぁぁぁ!! でもよ、今撃ったら、テメェんとこの勇者もぶっ飛んじまうぜぇぇぇ────!!!?」
「そんなの知らない! いっけぇぇぇぇぇぇ────!!」
エメリの魔弾が放たれる。
破滅の魔王が驚愕の表情を浮かべた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!?」
そして、反射的に破滅の魔王は防御の態勢を取る。
計画通りだ!
俺は拳に限界まで力を込めて、破滅の魔王を渾身の一撃を叩き込んだ。
破滅の魔王は錐揉み回転し、瓦礫だらけの絨毯を何度も転がった。
「やった!」
エメリの喜びの声が後ろから聞こえた。
後ろを向くと賢者がサムズアップをしていた。
俺は小さく笑い、破滅の魔王に視線を向ける。
奴は鼻から大量の血を垂らしながら、怒りに満ちた表情で俺を睨みつけていた。
「どおいうことだぁぁぁ?」
「お前はすでに無敵でもなんでもない」
「あ゛?」
破滅の魔王は首元に指を伸ばす。
件のネックレスが無いことにようやく気付き絶句する。
「なんか拍子抜けって感じっすね」
破滅の魔王が声のした方向に勢いよく顔を向けた。
玉座の背もたれの上。
そこに、ネックレスを指で回すシーフがいた。
「魔王ってのも大したことないんっすね」
「女ぁぁぁぁぁぁ────!!!」
「きゃっ、怖い! ここは逃げるが勝ちっす!」
明らかにおちょくって、シーフは崩れ落ちて外が丸見えになっている壁から飛び降りて戦線離脱。
アイツ、こんな高さから飛び降りて大丈夫なのか?
ともあれ作戦が成功したことに安堵する。
エメリが作っていた魔弾の正体は賢者が作った幻術。
つまり、ブラフだ。
奴には昨日の対決が記憶に残っている。
魔弾がそれ相応の威力だというのはしっかり刻まれていただろう。
いくらアイテムでダメージが無いと分かっていても、体は反射的に反応してしまう。
それが人間ってものだ。
この作戦は昨夜のエメリとの会話がきっかけだった。
しかし、ここまで上手くいくとは驚きだ。
加えて、シーフの技量が作戦成功に大きく貢献してくれた。
白状するが、シーフがいつ盗んだか全く分からなかった。
本当にとんでもない奴だ。
突如、激しい殺気と計り知れない闘気が空間を席巻した。
「やりやがったなぁぁぁぁぁぁ────!! 殺す! 殺す! 殺す! 必ず殺してやる!! 勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──────!!!!!」
口角が自然と上がる。
恐怖もあるが、それ以上に強敵との戦いに心が躍り出している。
「──来い、破滅の魔王」
最終決戦の火蓋が切って落とされた。




