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第21話 『インパクトのある盗み』



 俺たちが宿に戻ってから、しばらくしてから起きたエメリにシーフを紹介したら微妙な反応を示した。


「えー、この子で大丈夫なの?」


 まあ、当然の反応だろう。

 コイツの腕前には驚かされたが、未だに不安しかない。


「アッシの実力を知らないからそんなこと言えるんすよ」

「ふぅん、じゃあ、私からなんか盗んでみてよ」

「いいっすけど、アッシが本気出したらエメリ、だっけ? 顔真っ赤になっちゃいやすよ」

「……?」


 疑問符を浮かべるエメリ。

 賢者は、この後の展開が読めたようで窓の方に顔を向けた。

 俺もなるべく見ないようにする。


 シーフがくるっと一回転をする。

 顔の前で手を合わせて、ニヤニヤとエメリを見つめた。


「じゃーん!」


 シーフがバッと手を広げる。

 そこにあったのは下着だ。


 エメリはポカンとしてから、状況を理解してスカートの端を全力で押さえた。

 その顔はシーフが言った通り、真っ赤になっていた。


「え? 嘘でしょ!? ちょっ、返して!」

「力尽くで取り返したらどうっすか?」


 指にひっかけてエメリの下着をぐるぐる回しながら逃げるシーフ。

 なんとか取り返しそうとするが、スカートの件もありうまく動けないエメリ。

 これは酷い。


 

 いくらシーフと言えど、身につけるのにいくつかの工程があるものを盗むのは難しいだろう。

 ましてや下着など不可能だ。


 これにはタネがある。

 非常に単純で下らないタネだ。


 シーフはエメリが寝ている間に下着を剥ぎ取っておいたのだ。

 俺と賢者はもちろん止めた。

 しかし、シーフは、


「どうせ、この人だってアッシの実力を疑いますぜ。 だからインパクトある盗みを見せて度肝抜かせるっす。自分のパンツ盗まれたと思えば嫌でも認めざるを得ないっすよね?」


 と言って、俺らを丸め込んだのだ。



 結果は大成功だった。

 


×××



 俺たちは王城へ来ていた。

 とはいえ戦うわけではない。

 簡単な威力偵察だ。

 盗むのが得意なシーフと言えども、ぶっつけ本番で破滅の魔王と対面させるのは無茶がある。

 つまり、今回は一度破滅の魔王を見せて耐性を付けさせる魂胆だ。


 初めて来た時と同様に警備はおろか人ひとりいない。

 あっという間に玉座の間付近まで来れてしまった。


 ゆっくりと扉を開けて、破滅の魔王を黙視する。

 奴は玉座で大いびきをかきながら寝ていた。

 ずっとここに居るのか?


「アイツが破滅の魔王だ」

「全然スキがなっすね。仮に今盗みにいったら確実に殺されやす」


 やはり過酷な環境を生き抜いて来たことはあるな。

 破滅の魔王を見ても冷静さを失わない。

 それどころか相手と自分の力量差を瞬時に弾き出している。

 その瞳はとても少女のものとは思えない。


「あの首にかかっているのが獲物っすか?」


 シーフは破滅の魔王が首にかけているネックレスを指差す。


「そうだ。盗めそうか?」

「うーん、かなり難しいっすけど、ブレイブたちが隙さえ作ってくれれば必ず盗んできやすよ」

「具体的な時間は?」

「一、二秒あれば」


 普段生きていれば、その程度の時間は一瞬だ。

 しかし、戦いの中での一秒は永遠にも近い。

 ましてや相手は魔王。

 いや、弱気になるな。


「分かった。必ず稼ぐ」

「任せたっすよ」


 よし、今回の目的は達成した。


「撤退するぞ……エメリはどこいった?」


 一緒に来ていたエメリの姿が居ない。

 ふと賢者を見ると絶句しながら、玉座の間を見ていた。

 俺とシーフはつられて見ると、


「──っ」


 エメリが仁王立ちして、破滅の魔王に啖呵を切っていた。


「ちょっと! 魔力撒き散らすのやめなさいよ! そのせいでこっちはずっと具合悪いんだから!」

「あん? なんだ、女ぁぁぁ〜?」


 目を覚ました破滅の魔王が、エメリを睨みつける。

 エメリは怯む様子を見せない。

 そして、力強く声をあげた。


「勝負よ! 破滅の魔王!」



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