第19話 『作戦会議』
数日後。
俺は大分良くなった体を確認していた。
「問題無さそうだ」
「いくらインニェルさんの回復魔法をかけ続けてもらったって言っても、この回復力は異常じゃない?」
エメリが体の包帯を取り替えながら、ぺしぺしと叩く。
俺が意識を失っていた時も、こうして包帯を変えてくれていたらしい。
賢者は渋い顔で言う。
「昔からブレイブは傷の治りが早かったんだ。でも、今回の怪我の治りは過去最長かもね」
俺とエメリの表情が険しくなる。
過去最長。
つまり、それほどまでの重傷を負ったのだ。
正直、生きているのが奇跡的だろう。
「ねぇ、破滅の魔王ってそんなに強いの?」
「他の魔王とはタイプが違うから一概には言えないが、あえて言うなら、奴は肉弾戦最強だろう」
「そうなんだ。記憶だと割と良い勝負してたのに」
あっけらかんと言うエメリ。
俺と賢者は驚きを露わにした。
「記憶戻ってたの!?」
「全部じゃないけど、断片的に」
「内容を教えてくれ」
エメリはこめかみを指で突きながら話し始めた。
「どういう流れでかは分からないけど、私は破滅の魔王と戦ったの。アイツ、直線的だから距離を取って魔法を叩き込み続けたの。結局、決着はつかなかったけど」
「遠距離からの攻撃か。接近戦が得意な相手と戦うなら正攻法だね」
「だが、問題が二つある」
俺は指を二本立てる。
「一つは、遠距離攻撃の乏しさだ。俺は遠距離攻撃の類いは持ち合わせてない」
「僕はいくつかあるけど、破滅の魔王を倒しきれるような威力はないかな」
「私は魔弾だけ」
バリエーションがあっても威力がないと意味がない。
だが、威力云々の前に二つ目の問題が立ちはだかる。
「戦ってみた所感だが、破滅の魔王には俺の攻撃が一切効いてない」
「え? 嘘!?」
「ああ。剣の一撃、右拳の一撃は確実にダメージを与えられる代物だった。しかし、破滅の魔王は無傷だった」
「うーん、それは奇妙だね。からくりがあるのかもしれないね」
腕組みをする賢者に同意だ。
「まるで物語に出てくる吸血鬼姫みたい」
「吸血鬼姫?」
「そう。魔族を束ねている吸血鬼のお姫様なんだけど、敵意がある攻撃は全部無効化して相手に跳ね返しちゃうの」
「なんだそれは? そんな奴が相手だったらどうしようもないだろ」
「別にいいでしょ、物語に出てくる登場人物なんだから。そもそも、その物語は吸血鬼姫を倒す話じゃなくて救う話なの」
なぜかムキになるエメリを諭しながら話を元に戻す。
「大体、魔王が戦った時は攻撃効いていたんだろ?」
「あ、そっか」
「魔王と戦った後に身につけた能力か?」
俺の推察に賢者が否定の意見を述べた。
「いや、魔王は魔王になった瞬間の能力値で固定されるんだ。だから、魔王になった後で能力を追加したり、基礎値を上げるのは不可能だよ」
「つまり、破滅の魔王が無敵なのは能力ではないのか?」
「十中八九そう。多分、アイテムの力じゃないかな」
「アイテムか」
瞳を閉じて、まぶたの裏に破滅の魔王を思い浮かべる。
俺は最初に奴を見た時に違和感を感じたんだ。
あれは確か……。
「そうだ、ネックレス」
「ネックレス?」
「ああ。奴が首にぶら下げていたネックレス。あれだけが奴の印象から浮いていた」
「なるほど、ネックレスか。可能性はありそうだね」
まだ、仮説だが破滅の魔王攻略へ一歩前進出来た。
内心で喜んでいると、エメリが手を挙げて発言する。
「仮にネックレスが無敵アイテムだとして、壊したり出来るの?」
「それは」
戦闘中にネックレスを壊すのは難易度が高い。
ネックレスを狙っているのを知られたら、奴は全力で死守するだろう。
俺が渋い顔で悩んでいると、エメリがニヤリと笑う。
「私に提案があるんたけど」
「提案?」
エメリは自信に満ちた顔で、俺たちの度肝を抜く提案を言った。
「盗んでもらうっていうのはどう?」




