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転生したのに女神がもやし栽培キットしかくれなかったので、無職即追放されましたが、育ててたら貴重品でした  作者: Y.K


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無職もやし神、交配する(※貴族が死ぬ)

 無職もやし神は、気づいてしまった。


「……金、余ってね?」


 銀貨が、袋の中でじゃらじゃら鳴っている。

 もやし一束銀貨五枚が当たり前になった結果、生活費という概念が消えた。


 働いていない。

 職業欄は相変わらず「無職(察してください)」。

 なのに、金だけが増えていく。


「これが……不労所得……?」


 怖くなって、俺は散財することにした。

 健全な判断だと思う。



 向かったのは、王都の食材市場。


 そこには、この世界で「貴族しか口にしない」と言われる高級食材が並んでいた。


「ルミナリス・トリュフ」

紅晶根こうしょうこん

天露菜てんろさい


 名前だけで強そうだ。

 値段も強い。

 一欠片で銀貨十枚。


 普通なら手を出さない。

 だが今の俺は――


「全部ください」


 店主が二度見した。



 廃小屋に戻り、俺は腕を組む。


「さて……」


 目の前には、

 もやし。

 トリュフ。

 紅晶根。

 天露菜。


 異世界農業バトル、開幕である。


「交配って、たしか……」


 前世の知識が、ここで役に立った。


 遺伝形質は分離する。

 優性と劣性がある。

 一代目はだいたい強い。


「つまり――」


 もやし × 高級食材

 = 何かヤバい


 理屈は完璧だった。



 数日後。


 畑から、光が漏れ始めた。


「……あ、これダメなやつだ」


 引き抜かれたそれは――


 黄金に輝くもやし。


 しかも太い。

 異様に太い。

 もはや豆苗に近い。


「……名前どうするか」


 悩んだ末、適当に決めた。


「聖輝黄金もやし」


 センス?

 知らん。



 試食。


 一口。


「……は?」


 体が熱い。

 魔力が満ちる。

 疲労が消える。


 しかも――腹が減らない。


「ちょっと待て、これ」


 村人に配った結果。

•腰痛が治る

•魔力回復が爆速

•風邪が消える

•ついでに髪が生える(※個人差あり)


 噂は、爆発した。


「もやし神が、進化した」

「神殿の祝福より効く」

「もう祈らなくていい」


 やめろ。



 そして、貴族が来た。


 以前のあの貴族だ。

 金と権力の匂いがする。


「無職もやし神よ」


 呼び方が雑になっている。


「その作物、我が家が独占する」

「価格は我々が決める」

「民には施しとして与えよう」


 完全に地雷だった。


「それ、嫌なんだけど」


 俺が言った瞬間。


 後ろにいた村人たちの空気が、変わった。


「……今、なんて?」


「施し?」


「また、か?」


 貴族は気づいていない。

 一番まずい相手を敵に回したことに。


「勘違いするな、民ども」

「恵みは、管理されてこそ――」


 最後まで言えなかった。


「出ていけ」


 老人が言った。


「もやし神は、奪わなかった」

「分けた」

「値段も、下げた」


「お前たちは――奪う」


 その瞬間、民が前に出た。


 武器はない。

 剣もない。


 だが――数がいる。


「帰れ」

「帰れ」

「帰れ」


 貴族は後ずさる。


「ば、馬鹿な……!」


 結果は、あっけなかった。

•契約破棄

•市場不買

•使用人の離反

• 一部の取引が停止された


 もやしに逆らった貴族として、名前が残った。


 最悪の形で。



 夜。


 俺は焚き火の前で、黄金もやしを齧っていた。


「……なんでこうなる」


 誰にも答えはない。


 ただ、事実だけが残る。

•神殿は信仰を失い

•国家は統制を失い

•貴族は利権を失った


 原因:もやし。


 俺は空を見上げる。


「……女神、出てこい」


 返事はない。


 たぶん、笑っている。


 無職もやし神は、今日も名を持たない。

 だが――


 だがその夜、

王都では別の会議が開かれていた。

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