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転生したのに女神がもやし栽培キットしかくれなかったので、無職即追放されましたが、育ててたら貴重品でした  作者: Y.K


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無職もやし神、もやしを極めすぎて人型になりました(なお本人は想定外)

 もやしは、奥が深い。


 これは無職もやし神として祭り上げられた俺が、ここ数日で悟った真理だ。


「……品種、増えすぎじゃね?」


 小屋――もはや小屋とは言えない、勝手に拡張された研究棟の中で、俺は並んだもやし畑を見下ろしていた。


 白もやし。

 太もやし。

 細もやし。

 発光するもやし。

 風属性もやし。

 火に強いもやし(なぜか燃えない)。


 どれも俺の意図したものではない。


 異種族の連中が「この品種には雷属性を」「発酵させた方が神聖では?」とか勝手に口出ししてきて、気づいたらこうなっていた。


「もやしは……野菜だぞ?」


 何度言っても通じない。


 ドワーフは言った。

「硬度が足りん」


 エルフは言った。

「生命の流れが美しくない」


 リザードマンは言った。

「もっと湿度」


 結果――

 全部盛りになった。



「で、なんで魔法陣まで描いてるんだ?」


 床に描かれた円陣を見て、俺は嫌な予感しかしなかった。


「これは“生命安定陣”です」


 真顔で答えたのは、いつの間にか常駐している人間の魔導学者だった。


「品種改良が進みすぎまして」

「もやし単体では存在が不安定に」


「不安定な野菜って何だよ」


「ですので――」


 学者は、言ってはいけないことを言った。


「人型に固定しようかと」


「やめろ」


 即答だった。


「もやしは野菜だ」

「人型にする必要は一切ない」


 だが、周囲の反応は違った。


「神の御姿……!」

「ついに形を得るのか」

「これは信仰的に正しい流れ」


「正しくねえよ!」


 誰一人、止まらなかった。


 魔法陣が光る。

 発酵槽が泡立つ。

 なぜか納豆菌が追加投入される。


「待て待て待て待て!」


 俺が止めるより早く――


 もやしが、立ち上がった。



 白い。


 やたら白い。


 細身だが、無駄がない。


 人型だが、服は着ていない。

 ……いや、葉っぱが巻き付いている。


「……おい」


 目が、開いた。


 黄緑色の瞳。

 無表情。


 そして。


「……命令を」


 俺を見て、そう言った。


「喋った!?」


 研究棟が、沈黙する。


 次の瞬間。


「神の眷属だ!!」

「もやしの化身!」

「聖なるホムンクルス!!」


「だからやめろって言っただろ!!」


 俺の悲鳴は、完全に歓声にかき消された。



 とりあえず、外に出した。


 危険すぎる。


 だが、もっと危険だった。


「……試しに、動いてみろ」


 俺が言うと、もやしホムンクルスは一歩踏み出し――


 地面が、陥没した。


「え?」


 次の一歩で、十メートル先の岩が消し飛んだ。


 殴っていない。

 触れてもいない。


 圧だけで粉砕された。


「……ステータス見せて」


 魔導学者が震え声で言う。


 表示された数値を見て、全員が固まった。


「……神話級」

「いや、測定不能です」


 俺は頭を抱えた。


「なんで野菜がチート生物になるんだよ……」



 その日のうちに、噂は広まった。


 無職もやし神、

 ついに自分の分身を作り出した。


 王都サンクティアにも情報は届いたらしい。


「異端の自己神格化」

「神殿の教義に反する存在」

「即時討伐対象」


 だが――


 討伐隊は、境界に入った瞬間に撤退した。


 理由は簡単だ。


 もやしホムンクルスが、立っていたから。


 何もしていない。

 ただ、立っているだけ。


 それだけで、誰も一歩も近づけなかった。



「……なあ」


 俺は、本人(?)に聞いた。


「お前、名前あるのか」


 少し考えてから、もやしホムンクルスは答えた。


「ありません」


「だよな……」


 俺もない。


 沈黙。


「……じゃあ、お前は――」


 考えるのが面倒になった。


「もやし二号でいいか」


「了解しました」


 即答だった。


 その瞬間、周囲がざわつく。


「神が名を与えた……」

「第二の聖名……!」


「違う! 適当だ!」


 もう遅かった。


 こうして。


 無職もやし神は、

 チート級のもやしホムンクルスを生み出した張本人として、

 さらに誤解されることになる。


 なお本人は、ただこう思っていた。


「……これ、どうやって処分すればいいんだ?」


 世界は、今日も勝手に一線を越えていく。


 もやしのせいで。


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