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第2話 震える夢

神よ

 私は知っているのです。

 私の体も魂もすでにここには、いえ・・・この世にはないことを。


神よ

 私は知っているのです。

 私は、ただの振動。ただの波。

 そう、この門の、・・・この空間に縛りつけられた。

 座標の震え。

 波が魅せるひと時の夢。


神よ

 私は知っているのです。

 いつか、いつかこの門も消えましょう。

 いや、この土地も・・この星も・・・

 そしてこの宇宙(そら)も。


 だけど、それで良いのです。


 私には、炎の魅せるひと時の今がある。


 愛しい男に恋焦がれ、その幸せを願い・・・別れる。


 その今・・・を、生きた震える感情を・・・

 繰り返し、繰り返し

 生きております。


 そう、私には、ここには今、この時しかないのでございます。

 けれどもそれが、肉体に包まれていた時と何ら変わりましょうや?


 私、本当は感謝しておりますの。

 ここを訪れる人々に・・・

 我が主の安寧の地に無断で入ろうとする(やから)に・・・

 

 方々(かたがた)がここを(けが)そうとする(たび)

 私は・・・この空間(ばしょ)を想い出すことができる・・・

 私の炎に巻かれた、想いが息を吹き返す。

 背中の傷とともに揺れて震えるのです。


 方々(かたがた)の悪意が・・好奇心が・・・無礼が・・・

 私を呼び起す、いや波を震わす引き金となる。


 私の大事な大事な大切な今を

 征志郎(あのひと)に焦がれたその時を、短き時を・・・また、生きられる。


 私は知っているのです。

 私には隠されていたのでしょう?

 しかして、その答えは分からぬ。

 あの人は、墓場まで持って行ったのでしょう。


 ふふふ、そのおつもりなのでしょう。


 でも、私は知っているのです。

 御顔は見えずとも・・・

 殿方(あなた)の背中は嘘をつくのが下手くそ・・・


ですから、この気持ちを味わうことができる。

 貴方の温もりを求めて、永遠に妻でいることができる。


 いかに熱かろうといかに痛かろうと・・・・


ーこれで良いのです。これが私の幸せー


神よ

 いつかこの地が消え、誰も来なくなったのなら

 私の心の揺れが空間ごとなくなったのなら・・・

 この小さな私の心の震えを飲み干してくださいませ。

 

 そして、新たな宇宙(そら)の糧にしてくださいませ。

 新たな私たちを生み出す世界の。


 それまで・・・門の向こう・・・琴姫様(ひぐらし)とともに泣きましょう。

 

 ですから、何度でも、それこそ千代(ちよ)に・・・



ー私、千代(ちよ)と申します。これより先、お通しすることできませぬー

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