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第4話 二十歳も八つ過ぎ

あぁ、やっと家に着いた。

 今日も疲れたなぁ。

 一日通しのシフトは終わり。

 あぁ今年も暑いな。

 年々暑くなる気がする。

 こんなこと言ってたらオバサンか?

 でも確実に暑くなっているのは確か。

 シャツが汗でベタつくぅ。

 風呂。まずシャワー。

 

 私はもう大人になっていた。


 結婚適齢期なんてものがあったような。

 二十歳(ハタチ)も八つも過ぎるともう遅いんだっけ?

 イマドキまだセーフなんだっけ?

 まぁいいや。

 明日休みだしー。

 冷蔵庫にビールあったっけな?あぁ酎ハイか。


 おっと・・・燃料(さけ)入れるその前に。

 アタマがスッキリ起きてるウチに・・・

 PC、PC、私のパソコンちゃん。

 私は小説のWebサイトを開いた。

 昔から小説読むのは好きだけど・・・・

 近頃は書くこと・・・そう、投稿にも挑戦しているんだよね。

 構想は練りました。

 下手なりに・・・

 何か月か書き溜めて結末が見通せるくらいになってからスタート!

 尊敬する作家の大先生が毎日とりあえず何か書く!って言ってたから私もできるだけ毎日書く!書く!・・・なんてね。ムズカシ・・・。

 ともかく、定期的に更新。これは守りたい。・・・守りたい。グスン。


 どうなんだろう。私は小説で何が表現したいんだろう?

 よく分からなくなってくる時がある。

 人を楽しませたいのか、有名になってみたいのか、何か残したいのか。

 ・・・きっと、混ぜこぜなんだよなぁ。

 うーん、一番大きいのは私の場合、何でもない普段の生活に何かしている特別感が欲しいというか何というか・・・動機は不純ではないだろうけど・・・


 まぁ、くだらないと言われればそれまでだけど・・・

 私の人生ってあんまり立派なことできそうにないし・・・

 くだらないことが楽しいっていうか。・・・ねぇ。

 みんなが凄いっていうことも、興味のない人からするとくだらない部類に入ってしまうのかもしれないし・・・

 でも、好きな人には堪らないっしょ?それを楽しめば人生捨てたもんじゃなし。


 あぁでも良いコトもあったの。

 私のツタナイ小説にレビューやら感想をくれる人がポツポツいるの。

 いやぁ、これは嬉しい。嬉しいね。

 私もお返しにその人達の小説読んでたりして。アリアリか。


 でも、フザけた人もいた。

「ペンネーム、水たまりの英雄・・・だと?なぬっ?」

 私は遥か昔の記憶が蘇った。

 ・・・世の中には似たようなことを考える人も・・・いる・・だろう。


 しかし、その人は結構マトモな人っぽかった。

 私の小説の応援の感想は、私が苦労して考えて考えた文章を独自の理解で解釈してくれていた。力を入れた所を労ってくれるような感想だった。

 いつしか、私もマネっ子英雄さんの小説に感想を書くようになっていた。

 その人のジャンルはよく分からなかったなかったケドね。

 

 そんな日が続いていた。貴重な若さを消費しながら・・・


 私は小さな会社で経理も兼ねている。

 これでもこのエリアの本店的な扱いなので現場をいろいろとサポートすることは多い。

 今日はとある現場の新人君の売掛受注の記入間違いについて電話をしていた。

「だからですね。そこのところが先月の間違いの箇所と変わらないんです。」

「あ!もしかして、訂正してないデータを使ったかも、すいません。」

「いいんですよ。人手が足りない中、入ってすぐここまでしてるんですから。」

「いつもありがとうございます。すぐ訂正して送ります。」

「わかりました。後はこちらで先方には話しておきますから。」

 中々頑張ってるみたいね。この子。人手が足りないのは上の責任だわ。あっちの統括にサポートを厚くするようにお願いしておこう。

 顔は見たことないんだけれど。


 家に帰る。仕事はいい。まだ何とかなってる。

 問題は小説の方よぉ・・・・

 なんか・・・詰まった。

 言葉では何とも言えん。

 数週間の沈黙。

 感想も少なくなった。そりゃそうだわな。

 

 そんな時も英雄さんは感想を寄こしてくれた。そう、私の初期の作品を丁寧に読んでくれたみたい。特になぐさめはなかった。それだけに、妙に誠実だった。


 英雄さん、どんな人なんだろう?

 書いてるものは、戦史的?歴史if的なものなんだよね。年配の方なのかな?

 よく、私の展開の分かりやすい恋愛ものに興味をもったな。

 どこから迷い込んだのだろう?

 あ、コメントだ。なになに?


ー水たまりの英雄ー

「ひぐらしは早朝や夕方の薄暗い時に鳴きますものね。姫さまのかなわぬ思い、陰で泣いている物悲しさがジワッと伝わりますね。」

 あぁ、これは前に私の書いた恋愛小説もどきを読んでくれたな。

 うぅん。そうなのよね。

 ーカナカナカナカナー

 ・・・というひぐらしの鳴き声が読み手の勢いを切ってしまいそうだけど、どうしても入れたかった。入れ過ぎかな?

 だけど、お城が落ちるような緊急事態にお姫さまの心の底にあるのは、変わらない思い・・・いや、死に直面しているから押し込めていた泣き声なの。

 おっと、お返事お返事。


ー泣きぼくろのポエジアー

 あ、これ私のペンネーム。

 ポエジアは詩っていう意味なの。何語だったかしら。まぁいいわ。

「感想ありがとうございます。その点はこのお話で一番強調したいところなのですが姫の性格を考えるとはっきり表には出せない表現をしたかったのです。気がついていただけて嬉しいです。それと琴姫の自分称も考証的にはおかしいのでしょうけど、素の心に近づくほど、妾から私に変わっている時があります。楽しんでくださいね。」

 おっと、私も彼の小説読んだんだった。感想書こうっと。

 えーっとこの人の小説、小難しいんだよな。

 専門用語がいっぱいで何だか雰囲気しか分からん。

 でも、男の友情はいいね。そこは評価。船が好きなのかしら。

 昔の海軍とかの話なのかな?


ー泣きぼくろのポエジアー

「航海長の苦悩が天に向かって文句を言う時にストレートに出てますね。正直、専門用語が多くて私なんかは勢いで読んじゃいましたけど、全員の為に親友を切り捨てる。そんな過酷な状況でも、それでもって決断しなきゃならない辛さ・・・しっかり伝わってきました。」

 恋愛感情を含まないという面で、ある意味純粋な絆。肉体を介さない分、魂同士の距離が近いところはあるのかしら。千代と征志郎の関係もできるだけそのようにしたいなという思いはあったんだけどな・・・


 あら?感想に返事が来てる。 

ー水たまりの英雄ー

「いつもありがとうございます。文句も言いたくなるところですよね。友情が大前提の下地にあるのですが、この話で肝は覚悟だと思っています。覚悟を決めた人間のする仕事とその立場に対して敬意を払いたい。もしかしたら、命よりそれを重んじる場合があるのかなということを書きたかった。人にはそれでも行かなきゃイケナイときがあるってね。それを認めてあげたい。尊厳を守ってあげたい。そんな時に巡り合うこともあるかもって。」

 その人の覚悟、尊厳?ってその人の望むことってことかしら。

 好きなように・・・望むように・・・か。

 難しいなぁ。私がその立場なら・・・


 あぁでも・・・

ーオトコにはそれでも行かなきゃイケナイときがある。ー

 昔、そんなこと言ってた子がいたな。

 イマドキだからオトコが人になってるけど・・・

 言ってルことは同じだ。


 人って大変だね。

 でも、きっと私達には大事なことなんだね。

 ・・・水たまりの英雄さん・・・・


 うおっ!もうこんな時間?

 あぁ、明日から仕事忙しいな。夏に向けて私達の業界は実は繁忙期なのだ。

 帰りも遅くなるし、またしばらく小説を投稿できないかな。

 帰ってから書く気力も湧かなくなるくらいしばらく忙しい。

 それでも・・・頑張るぞ。


 案の定、私は小説を掲げられなかった。

 不思議なことに、その間英雄さんも来ていなかったことに気がついたのは後になってからだった。

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