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第3話 橙色の約束

「ほら、それがいい。」

「よし、僕が()るよ。」

 二人の少年が、柿の実を採ろうとしている。

 彼らの背中が柿の木に張り付いているように見えた。

 たどたどしい。

 その筋肉は若い。いや幼い。

 しかし、力強く挑戦をしている。

 夕焼けの西日のせいで、彼らのほっぺたも柿色の艶がある。

 坂の上の柿の木の話。


「もう少し、もう少し。」

 少年の煌めく瞳の先には、指の先にはその実がある。


 今年も実を結んだのだ。

 まだ、固いだろうが。

 届くだろうか?

 そのまだ細く(やわ)い指が・・・

「うぅぅー」

 精一杯伸びる小さな背。そして腕。踏ん張る足。

 その実を(つか)む。少年のその右手が。


ーやった!-


 だが、柿の木の枝は折れやすい。

 柔らかいのだ。


 枝を踏み折る音は無情。


「あっ」

 彼の右腕が時計周りに下に向かって()を描く。


ー落ちるー


 そう、少年の目には地面が揺れ動き近づいた。


 ・・・しかしそうはならなかった。


「おい、気をつけろよ。」

 もう一人の少年がしっかりとその腰を抱いている。


「ははは、ありがとう。」

 

 少年達は無事に地面に足をつけた。


「食べるかい?」

 落ちそうになった少年が実を差し出した。

「いや、いいよ。自分の・・あるから。」

 ちゃっかり彼は自分の分の柿をもいでいたらしい。

「ちぇっ。君に食べさせたいから採ったのに・・・。」

「・・・そうなの?・・じゃぁ交換しよう!」


 二人の口元から歯ごたえのある音が弾ける。


「まだ、固いね。」

「僕は柔らかいのより、固い方が好きだよ。」

「・・・僕もだ。」

「柔らかいのは母さんに頼んでジャムにしてもらうしかないからさ。」

「違いない!」


 二人の口元から、心からの笑いが弾ける。


「なぁ、僕が落ちそうになったら助けてくれよな?」

「・・・あぁ!今度は僕が助けるよ。」

「約束だよ。」

「おぅ任しとけっ。」

 二人は目が合って、また笑ってしまった。


 柿の木は優しく彼らの背を支えていた。


 ひぐらしは去った。


 今年も柿が実ったのだ。


 風が少し肌を刺すようになった夕暮れだった。

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