春夏冬
「寒……」
十月の朝、自宅の玄関を開けた大澤 葵は呟いた。
つい最近まで、たった十五分の徒歩通学でも汗がふきだし困っていたのが信じられない。
――いきなり冬じゃない。秋はどこ行ったの?
そう不満を感じつつも葵は少し喜んでいる。
二月生まれのせいか、葵は幼い頃から寒さよりも暑さに弱かった。十七才になった今でもそれは変わらず、猛暑の夏より極寒の冬の方がまだ楽に感じている。
しかし、ここ数年の「秋がない」による気温の急激な変化。葵の身体はそれについていけず、去年もこの時期に風邪をひいて苦しんだ。
今年は油断しないようにしよう。冬物、お母さん出してくれてたからちゃんと着ないと……。
そのとき、何処かからカラスの鳴き声が聞こえた。
葵がなんとなく空を見上げると淡い月が見える。
葵はため息を吐いた。まだ白く浮き上がるほどの寒さではない。
昨日の夜、なんかすごくエロい夢みた気がする。どんなんだったっけ?
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