7.話し合いは食事の後に
(「・ω・)「ガオー
「作戦会議の時間だよ!」
村のおばちゃん達から頂いた野菜を使ったスープでお腹を満たしてからボクは話を切り出す。
スキルを選ぶ時にも相談はしていたのだが、ボクの願い事によって変わってしまったことも多い。
リッタがボクと生きると決めてくれたこともあり、これを機に改めて話し合う機会が必要だと思ったからだ。
この世界に飛ばされたすぐは、慌てていたのはむしろリッタの方であった。案内人という役割からいきなり人間に変わってしまったことへの混乱もあったのだろう。
それに加えてリッタとこの世界に来てしまったことで、ボクという存在も大きく変容してしまった。
"1人分の場所"しかなかった所にボク達が入るという無理を通したことが問題らしい。
願い事を叶えてもらった後、ボク達は1度混じり合うことで1人分しかないこの世界への入口をくぐり抜けたとのことであった。
それによりこの世界に元々あった"ユズ"の場所にユズとリッタの2人が存在できているのだという。
しかし、その影響でボクは"モノが混ざった人間"となり、リッタは"人間が混ざったモノ"となってしまっている。
「キミは人間と言えるだろうが、僕と混ざってしまったことで成長や老い、寿命というものがあるのかは分からない。僕が案内人の時には自分が老いたり死んだりするイメージすら湧かなかったからね。でも、ほぼ"人間"のキミと、ほぼ"モノ"である僕とでは生きられる時間は違ってくるんじゃないかな」
「んー。早速"一緒に生きる"という約束が破られてしまう未来がみえてしまうよね」
笑いながら話すリッタは昨日までに比べると、とても優しい表情をしている。
「ボクに怒っていたんだと思ってたんだけど、、、」
と恐る恐る尋ねる。
「キミにも怒りはあったさ」
とすぐに返答があった。
反射的に「ごめんなさい」と謝るボクをみながらもう1つの怒りの矛先について話してくれた。
案内人の立場からみてもユズが迷い込んだことに特別なことはなく、いつも通り次の世界に案内するだけだと考えていた。しかし、気付けば人間として生きていかねばならないという大きな変化が生まれた。
人間の感情を手に入れたリッタにとって初めての不安や混乱に慌てていたことは事実ではあるが、なによりも"ささやかな願い事"によって自分の存在まで創り変えられたことに納得がいかなかった。
あの時のユズは"叶うならば"といった想いで願い事を口にしていた。つまり彼にとっては"ささやかな願い事"の範疇であるかの判断はできていなかったのである。
つまり、判断を下したのは願い事を叶える立場のナニカである。そのナニカにとって自分の存在が"ささやかな願い事"の範囲に含まれる程度のモノであったのだろう。
「神様なんて見たこともないが、文句だって言いたくなるさ」
リッタは「人間ってモノは本当にめんどくさいな」と言いながら、一度は乗り越えた怒りの感情が再び湧き出てくることに呆れてしまっていた。