5.願い事
(「・ω・)「ガオー
「決めたようだね」
最後になるんだけれど⋯といって女の子は続ける。
「持っていきたいスキルとは別に1つだけ
"ささやかな願い事"を叶えて貰えるんだよ」
⋯⋯最初にするべき説明じゃないのかな、と
頭の中だけで疑問を浮かべたが、、筒抜けだった。
少しムッとしたような仕草で女の子は続ける。
「この狭間に来る理由はそれぞれだけどね
そのほとんどが望んだわけでなく
知らない世界に行くことになるからさ
そんな人やモノに対して1つだけ
"ささやかな願い事"を叶えて貰えるってわけさ」
⋯⋯誰に叶えて貰えるの?
「さぁ?
わからないけど、そういうものなんだよ
僕も長らく案内人をしているけれど
神様というものには会ったこともない
それに案内人になるまでの記憶もない
でも大抵のことなんてそういうものだろう」
⋯⋯どんな願い事でもいいの?
「言ったように、"ささやかな願い"さ
そうだな、
前に案内したモノたちは
"食べ物を食べてみたい"
"人や動物に触れてみたい"
"自分を知ってもらいたい" だったかな
キミのような人たちは
"優しい家族の元に産まれたい"
"かわいい幼馴染が欲しい" とかもあったね」
「さぁコレが最後の問いだ
キミの願いはなんだい?」
⋯ボクは女の子に意識を向けながら"願い事"をした。
「キミと一緒に生きていきたい」
人形のような首をかしげながら女の子は答える。
「なんでキミの願い事に僕がでてくるのさ
それに1人分の場所しかないから
どっちにしたって僕はいけないよ
しかもキミ、僕が何なのか知らないだろう
人なのかモノなのかもわからないくせに
もっとも、、、
僕も案内人としての僕しか知らないけどね」
⋯1人暮らしがながいとさ
仕事ばかりで家族や友達と過ごすことが減って
誰かと過ごす時間っていいなと思ったんだ
でも家族も友達も、もう会えない
ボクにとっての友達はキミだけだから
勝手に仲良くなったと思ってるだけなんだけど
キミと新しい世界で生きていきたいなって
「ただの友達に
"一緒に生きていきたい"なんて言うのかい
不安な気持ちはわかるけどね
違う"願い事"にするん……… ん?」
景色が消えて、
狭間にやってきた時のように暗闇に包まれる
そして遙か先から小さな光が迫ってきている
意識を失う間際、女の子の声が聴こえた
「僕の存在も"ささやか"なモノだってことかい」