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見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
魔の森の主
50/50

終わりを失った男

(「・ω・)「ガオー



「――その願いは、おすすめしないよ」



ユズはそう告げた

静かな森の奥で薄明の光がゆらいでいる

そこに立つ男は、金属の胸当てを片手に

軽く笑っていた



「死ななけりゃ、稼げる。俺はそれで十分だ」



「……命を道具みたいに扱うのは、感心しないよ」



「構わねぇよ。死んだら何も残らねぇだろ?

 だったら、死ななきゃいい。それだけだ」



ユズはしばらく黙って男を見つめた。

やがて、諦めるように息を吐き、掌をかざす



薄紫の光が男の身体を包み淡い刻印が浮かび上がる



「キミから何かを貰えるとは思えない


 ――“循環”から外れる

 それが君か支払う"見返り"になるだろう」



男は意味もわからず笑い飛ばした

「なんだそりゃ

 まぁいい、これで死なない俺の完成だ!」




---




数日後

北の廃坑で、男は仲間とともに魔物と遭遇した

黒い甲殻を持つ巨大な獣


仲間たちは叫び、逃げ惑い、そして――死んだ




男だけが立っていた

胸を貫かれても、喉を裂かれても、息は止まらない



腕を食い千切られても、視界が赤く染まっても

意識は離れない




「はは……すげぇ……本当に、死なねぇ……」




しかし次の瞬間、笑いが悲鳴に変わる


確かに“死なない”


だが、傷がふさがるわけではなかった




流れ続ける血

焼ける痛み

裂ける感触

骨の軋む音


それらすべてが、終わらず続いていく




魔物が去り、腐蝕が進み……

虫たちが寄り、肉を食い、骨を啄んでも――



彼の“命”は、まだそこにあった。



---



やがて身体は土に還り、形を失った


それでも彼は“在る”ことをやめられなかった


痛みの代わりに、虚しさが沁みていく


見ることも、聞くことも、もうできないのに





ただ、風だけが通り過ぎていく

その風の中で、遠くから声が届いた



――"だから言っただろう"



その声は怒っているでも、悲しんでいるでもない

ただ、静かに響いた




---





“死なない” とは “終われない” こと



“循環” から外れた魂は “そこに在る” だけ




既に身体はなく、風すら感じられぬ魂は

終わりの来ない時の中で

――今も静かに立ち尽くしている





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