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見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
魔の森の主
49/50

やってきた卵の話 - 完

(「・ω・)「ガオー




「いま帰ったぜー!」



“神からのおつかい”を終えて

ジットが少女と共に屋敷へ帰ってきた


門を開けると懐かしい香りと

どこか変わった気配が流れてくる




「ジット!おかえりなのさ!」



リッタが笑顔で迎えると

少し離れた丘を指をさして言う


「ユズはあっちなのさ

 ジット達が来るまでに完成させなきゃって

 ……ずーっとはしゃいでたのさ」




示された方角には

漆黒の尖塔をいくつも抱えた

巨大な城がそびえていた



外壁は闇そのものを練り上げたように黒く

そこを走る赤い魔力の筋が脈打つたびに

塔の先から黒炎がゆらめいて空を焦がすように輝く

ーーー地を揺らすような威圧感




「……やりすぎだろ、ユズ」

ジットが額を押さえると、隣で少女が苦笑した




「何の建物なんだ?」


「さてね。聞いてみるといいのさ」


リッタの笑みに

ユズの新しい“仕掛け”を察する2人



「報告もあるし、行ってみましょう!」

少女は興味津々にジットの腕を引き丘を登っていく




---




大扉の前でジットが声を掛けた

「おーい、ユズ!いるか?」



建物の奥から、ひそひそ声が聞こえた

「……ジットだ

 隠れて隠れて!あとは作戦通りにね!」


「…誰かいるのか?」


「だ、大丈夫!入っていいよ!」




ギィ……と扉を押すと

そこには玉座のような椅子に

腰かけるユズの姿があった



いつもの軽やかな雰囲気はなく

威厳に満ちた静寂


その場の空気すら支配するような

存在感に少女は思わず息を呑む



「やぁ、ジット。おつかれさま

  ――まずは報告を聞こうかな」



張りつめた空気とは裏腹に

ユズの声はいつも通り柔らかい



ジットは安心したように軽く笑い

距離を取りながら報告を始めた



「まずは装備、返しとくぜ。今回も助かった


 これは街の人が神様に捧げたいって預かったやつだ

 渡しておいてくれ」


「ありがとう」

ユズは頷くと、続けてジットが語り出した



---



「覚えてるか? 北の鉱山都市

 魔鉱の精錬で水が汚れちまって

 街全体が苦しんでたあの場所だ


 今回の神様からの依頼も、その街だった


 そこで嬢ちゃんが町の役人と協力して

 “灰苔はいごけ”っていう

 "汚れ"を吸う苔を見つけたんだ


 今じゃ、水脈が澄んじまってるんだぜ!」



ユズの目がわずかに見開かれた

「スキルを使わない解決方法をみつけるなんて

 ……すごいじゃないか!」



少女は照れくさそうに笑う

「ジットさんと神様のおかげです

 私なんて、まだまだですよ」


「いやぁ、嬢ちゃんは立派にやったさ!」



ジットは肩を叩きながら誇らしげに笑う



「この前の魔物も、嬢ちゃんがちゃんと討伐したんだ

 もう立派な“英雄”だぜ」







「 "英雄" ね……」

ユズが口元に笑みを浮かべ、指を鳴らした



ドンッ――

玉座の背後で煙のような魔力が膨れ上がった

次の瞬間……

圧倒的な存在感をもつ“ドラゴン”が姿を現す



「っ!?」

少女はその力に呑まれ、膝が震える

ジットは即座に剣を抜き、ユズを睨みつけた



「おい、ユズ! なんのつもりだ!」





……ユズは肩をすくめ、いつもの調子に戻る

「ごめんごめん!

 新しい家族を紹介したかったんだ」



「……は?」


「“願い”の見返りとして

 強くてかっこいい "魔の森の主” の

 演出を手伝ってくれるんだ!


 2人の"英雄"がこれだけ驚いてくれるのなら

 この"見返り"は大儲けだったよね!」



嬉しそうに笑うユズに、ジットもつられて吹き出す


「……ったく、お前ってやつは」





「トトさま もういい?」


ポンが尋ねると、ユズはふっと口角を上げて頷いた


「ああ、ありがとうね」

その声と同時に、“ドラゴン”の巨体が淡く揺らぎ

次の瞬間には小さな“亀”となって

ポンの頭の上へと収まる


どこか誇らしげに胸を張るポン


その姿に、ユズがいたずらっぽく笑った



「そうそう、ジットたちにも伝えておくね

 この亀さん、僕より強いから

   ――怒らせちゃうと世界が滅びるよ」 




「「は?」」

ジットが呆れ、少女が目を丸くする


けれどその声には、もう恐れも緊張もない



“世界を滅ぼす”ことのないとわかっているからこそ

この冗談は、ただの冗談として笑い合える



ポンは小さな手を伸ばして

抱え直した亀の鼻先でそっと少女の頬をつついた


怯えていた少女の表情がほころび

コンがくすりと笑う




その瞬間、部屋の空気がやわらかく光を帯びた




――今日も“魔の森”は平和である


  少しだけ騒がしく、少しだけ優しい


  そしてまた、新しい1日が巡り始めた




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