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見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
魔の森の主
48/50

やってきた卵の話 - 7

(「・ω・)「ガオー



「トトさま……」ポンはユズに願った


ドラゴンの願いとは違う

けれど、その根にあるものは同じだった




――どんな姿であっても一緒に過ごしたい

その純粋な想いが、静かに部屋の空気を揺らした




ユズは少し驚いたように目を丸くしそれから笑った


「わかったよ

 ポンの子なら僕たちにとっては孫みたいなもんだ


 ね、リッタ!」



ドラゴンの姿を戻す試みが上手くいかない中

ポンはユズに“お願い”をした



“魔の森の主”として

願いを叶える代わりに“見返り”を求めてきたユズ


けれど身内に対してだけは

彼はどうしても甘かった




「悪いけど少し頼まれてくれるかな?」

リッタは既に理解しているように頷き身体を横たえた



そして……意識だけを“狭間”へと飛ばす。




――




「できたね」

ユズとドラゴンは息をのんだ



「これで上手くいくといいけど……」

ユズは笑いながら、少し肩をすくめる




「さっきは勢いで約束したけどさ……

 

 もしキミが力に呑まれたら

 多分僕じゃ止められないよ


 そのときは、この世界も一緒に終わっちゃうね!」




ドラゴンが呆れたように言う




「ユズ……お主、客商売をしておるのだろう

 もう少し “安心” というものを売ったらどうじゃ」



ユズは にやり と笑う

「幸いにも、この世界じゃ

 客を “神様” 扱いする常識なんて存在しないんだよ」



ユズが笑顔で返答した時、

 "狭間" からリッタが戻ってきた



「やぁユズ!ちゃんと探してきたのさ!」


リッタにとってユズに頼られることは

ながく一緒にいる今でも何より嬉しいことだった




「これで準備が整ったね」




ユズの手には

 “欺瞞” “欺騙” “自欺” の刻印を宿した腕輪


その腕輪のなかに リッタが“狭間”で見てきた

滅んだ世界の“全て”を重ね合わせる



ドラゴンの“願い”を形にするための手筈は、整った





「さて……キミの“願い”は元の姿に戻りたい


 ……そして居場所を見つけたい




 その “見返り” は――」



ユズは、珍しく言葉を詰まらせた




彼はわかっていた


ドラゴンは “願い” によって姿を変えられ

世界を滅ぼしたのは事実……だが


住む世界を亡くし此処に流れ着いた被害者でもある




そんな存在から見返りを求めるのは

ユズの心が拒んでいた




ポンが、そっと言葉を紡ぐ

「トトさまに 願わなくても ポン 親」



リッタが微笑んで答えた

「ーー“住む場所”は、もう決まってたみたいなのさ」




ドラゴンは目を瞬かせた


「……ふむ

 ポンには感謝しかないのぉ



 お主に支払うものが“見返り”というのなら

 吾輩からは


  “―ーーー―”   というのはどうじゃ?」




 ーー!ユズは目を輝かせた


「最高だよ!やっぱりわかってるねぇ!」



リッタは呆れつつも笑った

くだらない会話のように見えるが


確かに “願い” と “見返り” は結ばれた




「ユズ!」

「あぁ、そうだね。やろう!」


ドラゴンが腕輪をはめ、ユズがスキルを発動する


その力に重なるようにリッタが “狭間” で見た

ドラゴンの本来の姿を強く思い描く




2人の力が溶け合い、世界が震えた




ーー




眩い光が部屋を満たす

魔の森が唸り、風が渦を巻く



「うおお……!」

ドラゴンが叫ぶほどの力の奔流


世界ひとつを“騙す”ほどの魔力が空間をきしませた





そして――



爆ぜる風

光が収まり、そこにいたのは――





ーー小さな、小さな亀だった。


「え、リッタ……間違ってない?

 さすがにもう一回は無理だよ……」



「失礼なのさ!それが“本来の姿”なのさ!」



2人は地面に視線を落とし、言葉を失った





「おぉ……これこそ吾輩の身体で間違いないぞ!」

小さな亀が胸を張る




ユズは苦笑して頭をかいた

「……キミ

 その姿で“吾輩”って言ってたの?」



「何を言うか!

 この甲羅の曲線、脚の筋肉

 完璧なッ! 完璧な造形美ではないか!」



何度見ても、亀は亀だった



けれど――

この世界を滅ぼすほどの力を宿していた

“元ドラゴン”は、おそらく力はそのままに

今はただの小さな亀としての形を見せている




「もう僕たちにもただの"亀"にしか見えないよ


 力も見た目も、重さもドラゴンのままだけれども


 世界はキミを "亀" として認識しているだろう」




ユズの話を聞き終えるとポンは亀を抱き上げ

自分の頭にそっと乗せた




「よかった……」




その声は、安堵と幸福に満ちていた

すぐに顔を上げて言う


「言葉遣い の 指導!」



そう言って小屋へ駆けていった




その背を見つめながら、リッタが静かに呟く



「“狭間”で見てきたんだけどね

 ……あのドラゴン 

 もとは戦争で造られた兵器だったんだ


 媒介にされたのは――亀

 理由はわからないけど……

 長寿とか、守護の象徴だったのかな」



ユズは微笑んで言った。

「世界を滅ぼせるだけの "亀" が

 ポンの子どもになるなんてね」



「……でもドラゴンさんも満更でもないのさ!」



リッタの言葉に、ユズも笑う




小屋の中から、ポンと小さな亀の笑い声が聞こえた

その音は確かにこの世界に馴染んでいた




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