表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
魔の森の主
47/50

やってきた卵の話 - 6

(「・ω・)「ガオー


作業場には、金属と魔石の匂いが満ちていた



打ちつけられる鉄の音が空気を裂き

溶けた魔力がゆらりと形を変えていく



机の上には幾重にも重なった設計図と

手垢の染みた古書。ユズとドラゴンは

言葉を交わすことなく黙々と作業を続けていた



リッタとコンは

その張りつめた空気を乱すまいと

部屋の外で息を潜めている


ただ一人、ポンだけが

扉の隙間からこっそりと覗いていた



「この装飾……本当に必要なのであるか?」

ドラゴンが細工の施された金片を摘み上げる


ユズは微笑みながら手を止めた



「当たり前じゃないか!

 スキルの付与だけなら簡単さ

 でも、それじゃあ美しくないだろう?


 ……昔はスキルもステータスも関係なく

 僕の装飾を“欲しい”と言ってくれる人が

 大勢いたんだけどね」



ドラゴンは何かを言いかけ、やがて口を閉ざした

沈黙が落ちる


けれどその沈黙は、不思議と心地よく

確かな信頼で満たされていた



何度目かの実験

魔法陣がまばゆい光を放ち空気が低く唸る

しかし、ドラゴンの姿は微動だにしない

輪郭すら揺らがなかった




「……どうやら

 吾輩の“存在”は、もう戻らぬようだな」


掠れた声に、ユズは静かに首を振った




「違う……。

 おそらくだけど卵として“狭間”を渡った時点で

 君はもう別の存在になっていた


 この世界における君の“存在”は

 あの殻を割った瞬間に生まれ変わったんだ


 つまり――今の姿こそが、“君そのもの”だと思う」



2人の試行錯誤の末

ひとつの答えが形を成していく



――



行き詰まりを感じたことで気持ちを切り替える為

庭へ出たユズはドラゴンが生まれた小屋から

わずかな魔力の残滓を感じ取った



ユズはそこに残っていた小さな破片を拾い上げる

淡く光を帯びた卵の殻――


「これ……まだ君と繋がってるみたいだね」



差し出された殻に触れた瞬間ドラゴンの目が揺れる



赤く燃える空、崩れ落ちる塔。祈りと絶望の声

遠い記憶が流れ込んでくる。



「……そうか

 吾輩は、“力を求めた世界”が生み落とした

 “願いの結末”だったのだな」



ユズはそれを聞いても、穏やかに微笑んだ



「それでも きっと

 君がここにいることには意味があるよ」



しばしの沈黙

やがてドラゴンは翳った瞳でぽつりと呟いた



「元の世界は滅びてしまった

 ……いや滅ぼしてしまった


 この"身体"は この世界でも"異質"であろう……


 吾輩のような存在には

 居場所などないのではないかのぉ……」



ユズは口角を上げる



「なら、“戻す”んじゃなくて――“騙そう”」


「……騙す?」


「そう!

 君を、僕を、そして世界を


 “この姿こそが正しい”って

 思い込ませてしまえばいい」



ドラゴンはユズを見つめる


「なるほど

 ……“世界を欺く”というわけか

 愚かで、、、できるのであれば 実に面白い」



ユズも笑みを返す



「職人ってのはね

 美しく騙すのも仕事なんだ」



再び作業場にもどった2人

ユズとドラゴンの魔力が波のように装備へと流れ込み

金属がかすかに鼓動を打つ



その光を見つめながら、ドラゴンが呟いた



「もし吾輩が “世界を壊す” ほどの力に

 呑まれそうになったら


 ――ユズ、その時は止めてくれ」




ユズは寂しげに微笑んだ




「頑張ってはみるけどね

 でも僕は君を壊すために止めるんじゃない


 "ポンの願い"と

 ……“君の願い”が途切れないように止めるんだ」



2人は互いに手を重ねて最後の刻印を打ち込む




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ