やってきた卵の話 - 1
(「・ω・)「ガオー
「カカさま たまご みつけた!」
森を駆ける小さな足音とともに
ポンが弾むような声でリッタを呼んだ
ーー
ポンはひとり“魔の森”を駆け回っていた
その日、木漏れ日の下で見つけたのは
動物たちに囲まれながら
困ったようにコロコロと揺れている“卵”だった
「見たことのない卵なのさ
……ポン、食べるのかい?」
今は可愛らしい少年の姿をしているが
ポンの本来の姿は大きな獣。
だからリッタはつい
“食用”として見つけたのかと思ったのだ
「ちがう。ポン、そだてる」
短いその言葉に、リッタは思わず息をのむ
数多の“願い”を叶えてきたユズやリッタから
“家族”や“愛”を知った――
それが確かに、コンやポンの中にも根づいている
「ポンもついに “親” になるのさ」
リッタは柔らかく微笑んだ
我が子が“命を育む”ことを選んだ
それだけで、胸の奥が少し温かくなる
「少し見せてもらってもいいかい?
……安心しておくれさ、食べないのさ!」
ポンの疑いのまなざしに苦笑しながら
リッタはそっと手をかざす
その指先に宿るのは
ユズと分かち合う"絆の糸"
「コンと一緒に神様に会いに出かけてるけど……
“ユズの身体”は置いて行ってからね
――少しだけ、スキルを借りてくるのさ」
リッタとユズ。
この世界に降り立つときに一度混ざり合い
旅の途上でも幾度か同じ“存在”を分け合ってきた
だからこそ今も
互いの力を自由に行き来できるのだ
やがてリッタの瞳に、淡い光が映る
手のひらの卵がわずかに震えた
「……これは “この世界の生き物” ではないのさ」
言葉に滲むのは、驚きと警戒
“別の世界”の気配を知る彼女だからこそ
そこにある“異質”を感じ取ってしまったのだ
「危険なものかもしれないのさ
……どうするのさ?」
ポンは迷わなかった
その小さな胸を張って、はっきりと言う
「そだてる」
その声は、静かな森に溶けていった
リッタは少しのあいだ沈黙し――
やがて優しく笑って、小屋づくりの準備を始めた
「それじゃあ、親の役目を果たすのさ」
その夜
リッタとポンは大急ぎで建てた小屋の中で
大きな狐の姿に戻ったポンが
柔らかな尾でそっと卵を包み込み優しく暖める
焚き火の光が揺らめくたび
卵の表面がわずかに光を返す
まるで遠い“別の世界”が
そっと息づき始めたかのようだった。




