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見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
魔の森の主
38/50

とある医者の話 ‐ 3

(「・ω・)「ガオー


この場所でユズと出会ってから男は研究室で

一睡もすることなく娘を救う方法を探し続けていた



「……できたのか」


震える指先で試薬を混ぜ合わせると

淡い金色の光が瓶の中を走った



男のそばには幾つもの切り込みと

細い穿孔が刻まれたユズの腕がある



“刻まれ病”――


魔力を有しながらも 魔法を使えない者の

魔力が淀んでしまい詰まることで発症する病



その原因を突き止められたのは

膨大な魔力を有する"ユズ"の腕を鮮明に

“解剖”できたからに他ならない



魔力の淀みを浄化するだけでなく

魔力を身体のエネルギーへ転換する


男はついに――その"治療法"を現実にしたのだった




「おそらく……これで痣の進行は止まる……

 いや 完治させられるはずだ」



リッタがゆっくりと頷いた



「やっぱり貴方はすごいお医者さんだったのさ


 娘さんを救うのは

 “魔の森の主” なんかじゃない


 ――貴方だったのさ」


男は言葉を返さなかった

ただ静かに瓶を握りしめ娘の姿を思い浮かべた




安堵する男にユズが語りかける



「さぁ “治療法” は見つかった

 僕たちが保証するよ 

 間違いなく娘さんの病は治るだろう


 だから……



 “誓約” 通り 

 貴方の “全て” を頂くよ



 貴方の物語はここで終わりさ」




ユズは“吸収”のスキルを発動して

それがどういう意味なのかを男に見せつけた



“全て”の意味を理解した男は 叫ぶ



「ま、待ってくれッ!

 キミに“全て”を差し出す

 それはいい! 約束だ! 守るとも!



 だが……娘が治るまで

 見届けさせてくれないか



 私が! 治してあげなければならないんだ!」



「ダメだよ


 “治療法は見つかった”


 ――それで終わりさ」



淡々と 抑揚のない声

けれどその言葉の奥には……




「やはり“魔の森の主”は……


 人間の味方ではなかったのか……ッ


 魔物なのか! 悪魔なのか!」



男は怒りと絶望のままに罵倒を浴びせ続ける



その声に耐えきれなかったのはユズではなく

――コンとポンだった。



「「 ちがう トトさま 優しい 」」



小さな声だったが確かに響いたその声に

男はふと我に返る




「ユズも言葉足らずなのさ」


リッタが間に入り 穏やかに言った。



「ユズの言った通りさ


 “貴方” は娘さんのところには行けないのさ……


 それに…

 もうこの場所に留まることも難しいだろうさ」




「何を言って……ッ?」


男は気づいた 自分の身体が――

薄く透けて消えかかっていることに



ユズが重い口を開く



「この森に来た時に貴方は言ったよね


 “家で書物を漁っていた”って


 本当に娘さんのために全力だったんだろう



 でもね……人間の身体はそんなに強くない


 貴方はそこで “死んだ” んだよ


 病気の娘さんよりも、先にね」



ユズの声は静かだった

責めるでも悲しむでもなくただ事実を告げるだけの声



「決して意地悪をしていたわけじゃないんだ



 魂だけの存在は、儚い“モノ”なんだよ

 僕もこの世界に来たときに

 同じような経験をした


 思考や感情が安定しなくて……


 身体が無いって、不思議な感覚だよね



 それでも! そんな状態でも!

 貴方は病に打ち勝つ方法を見つけた


 本当にすごいことだと思う!


 ……でも、



 “貴方” は娘さんのところへは行けない



 けれど――」



ユズは微かに笑みを浮かべる



「貴方の “全て” を貰った

 

 "僕" が娘さんを助けるよ


 必ずね “医者” としても “父親” としても」



あぁ――男は納得してしまった



「やはり、貴方は “魔の森の主” なんだな……」



そう呟くと、静かにユズへ歩み寄る。



「ありがとう

 娘を救う機会を……時間をくれて


 本音を言えば私が救いたかった


 だが まさか私が先に死んでしまうとはな……


 ……情けない……娘を 頼みます」




男は力強くユズの手を握り――


次の瞬間

光の粒子となってユズの中へと溶けていった




「コン、ポン


 娘さんを連れてきてくれるかい?

 ……それと、あの人の身体も一緒にね」




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