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見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
魔の森の主
34/50

少女の話 ‐ 10

(「・ω・)「ガオー



「おかえりなのさ!」

扉の奥からリッタが穏やかに声をかけた



だが、少女には届かない

その場で泣き崩れ弟を強く抱きしめている



「お姉ちゃん、どうしたの?」


弟は涙の意味がわからず戸惑いながらリッタを見る



「まだ形を保てるほど

 安定しているわけじゃないからね



 あんまり強く抱きしめない方がいいのさ」



その言葉の意味を理解するのに数秒かかった

少女は慌てて弟を離し震える手でその身体を確かめる


温かい……ちゃんと息をしている

それだけで胸がいっぱいになった



けれど、なぜここに弟がいるのか

なぜ“生きている”のか

疑問がこみ上げてきて少女は顔を上げた




「とりあえずお茶でもどうかな

 もう少し時間がかかるみたいなのさ」


リッタの声からユズがまだ戻っていないことを悟る



弟の姿を何度も見つめながら──

もしかしたら、両親も……

そんな希望が抑えきれずに胸の奥で膨らんでいく



ーー



やがてユズが奥の部屋から姿をみせる


「やぁ! 荷物ありがとうね!」

その声はとても軽やかだった



少女はユズに続き

両親の姿が現れないことに落胆しながらも

弟がここにいる奇跡を噛み締めて言った




「父と母は……残念でしたが

 弟を助けてくださってありがとうございます


 私にできる“見返り”は想像もつきませんが


 ユズさんたちのために何でも致します」



深く頭を下げる少女を見て

ユズはリッタに視線を向ける



「……えぇ、まだ話してないの?」


「ついさっき帰ってきたばかりさ

 感動の再会を邪魔できないのさ!」


「そういうことか……」



ユズは一息ついて少女に向き直る。




「先に言っておくけど、君の両親はここにいるよ



 でも──まだ会わない方がいいと思う」



その言葉に、少女は部屋を見回した

けれど、どこにも姿はない


ユズに許可を貰い屋敷中を駆け回る

それでも両親を見つけ出すことができずに

ユズとリッタの元へ戻ってきた



「見せてあげるといいのさ」

リッタの言葉を聞き少女は吠えた



「お願いします! 会わせてください!」



懇願する声に、ユズは短く息を吐いた

「……本当に?

 じゃあ、君だけだよ


 僕は弟くんには絶対見せたくないからね」



2人は奥の部屋へ向かった



灯りの少ない静かな部屋で

ユズがゆっくりと両手を差し出す




「ほら」




少女は“ほら”の意味がわからず

ただその掌を見つめた




──そして息を呑む



そこには両親の顔が浮かんでいた


少女に気付き確かに喜んでいる

喜んでいるはずなのに……



凹凸のない皮膚 形の定まらない口

笑っているのか叫んでいるのか分からない



──それは“生きている”顔ではなかった



声を失い 足がすくむ。

少女はただ ユズの手の中でゆらめく



 “両親の顔”に触れようとして──



そのまま意識を手放した



---



「だから言ったのに

 ……リッタも意地悪だなぁ」



「どうせ見せなきゃ

 ずっと会いたいって言い続けてたのさ!」


「それはそうだけど……」


少女をベッドに運び

隣に弟を寝かせたユズとリッタは


静かにお茶を飲みながら話す




洞窟で回収した “ナニカ"

その中には 動物も、魔物も

"少女の家族" も、すべてが溶け合っていた。



ユズがそれを取り込み、“解析” し “解きほぐす”



“復元”──“形成”──“定着”


元の身体を"復元"する


皮膚や内臓といった"足りない"ものを形成し


"ズレ"のないように"定着"させていく



両親とは違い弟の身体だけは奇跡的に保たれていた

まるで何者かに守られていたかのように


…おそらくそれが"ナニカ"の願いに繋がるのだろう






「……あの子が起きるまでには

 元に戻してあげたいけどね」


ユズがぼそりと呟く 「間に合うかなぁ」



リッタは静かに頷きユズとの魔力をの繋がりを強めた




夜の森の外では

木々がざわめき、風が通り抜けていった





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