少女の話 ‐ 9
(「・ω・)「ガオー
少女は歩いていた
かつて
“魔の森”へと駆けたときのような焦りはもうない
今はただ、景色を楽しみ、露店を覗き、
行き交う人々と笑顔を交わしながら──
生きていることを楽しんでいた
家族を失い
あの森で生涯を閉じようとしていたあの日
けれど洞窟で見た光景は
信じがたいほど鮮烈だった
"神"であるユズたちに願えば、もしかしたら──
家族のもとへ行けるのではないか
そんな希望が、胸の奥に灯っていた
もし家族に会えたなら、何を話そうか
“魔の森の主”と出会ったこと
自分の身体が“ナニカ”と戦ったこと
“神様”と話したこと
たった数日ではあるが
お土産話はいくつもいくつも溢れてくる
"願い" の代償に何を求められるだろう
ユズやリッタに渡せるものは何だろう
──たとえ無理難題でも
家族と再び会えるのなら
その為なら何十年だって頑張れそうな気がしていた
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“魔の森”にたどり着くと
コンとポンが出迎えてくれた
ジットにペンダントを返しているため
此処から先へは"道案内"が必要なのだろう
少女がジットのあれからを尋ねると
「「 ジット 骨 バキバキ 」」
「「 ジット 今頃 グーグー 」」
「アズラ 心配」 「ジット が 悪い!」
いつもの調子でジットへ責任を押しつける
2人に少女は思わず笑ってしまう
そしてふと、気になっていたことを尋ねてみた
「アズラさんとジットさんってご結婚されてるの?
少し年が離れてるように見えるけど……」
すると2人は顔を見合わせ、そろって小声で言った
「「……トトさま に 聞くといい」」
急に雰囲気が変わる
慌てて話題を変えようと少女は元気に言葉を返す
「2人とも本当にありがとう!
大きな姿もかっこよかったよ!」
だが、その言葉が逆に2人の気持ちを
沈ませてしまうとは思わなかった
「コン 弱かった」 「ポン 役立たず」
落ち込む2人を励ましながら
少女は一緒に屋敷を目指した
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「「 着いた 」」
森の奥
見覚えのある景色の中で2人が立ち止まる
コンとポンはゆっくりと手を伸ばし
何かの境界を撫でるように弄った
「「 "ただいま" 」」
その声とともに空気が波打つ
数日前に訪れたユズの屋敷が静かに姿を現した
「「 案内 おわり 」」
「「 コン と ポン は 修行 」」
そう言い残して2人は林の奥へと駆けていった
少女はその背に 「ありがとう」と
もう一度感謝を告げて 深呼吸をし扉を叩く
──トン トン
「はーい!」
扉の向こうから現れたのはポンよりも小さな男の子
見間違えるはずがない
少女の弟だった




