少女の話 ‐ 7
(「・ω・)「ガオー
「やぁ、ジット!
本当に会いたかったよ!」
「まったく……
次から連絡用の魔導具だけは
ちゃんと持ち歩いて欲しいのさ」
軽口を叩きながらも
その声には明らかな安堵が混じっていた
光が収まった洞窟の中ユズとリッタが姿を現す
かつての仲間たちが揃ったその光景に
ジットは息をつく
「……とりあえず、、、助けてくれ」
未だに“重力”の力で押さえつけられていた
ジットは苦笑しながらそう言った
「あ、そうだったね」
ユズが指を鳴らすと圧迫感が霧のように消え
身体を縛っていた重力も解けた
空気が一気に軽くなる
(ユズさん……? リッタさん!?)
少女の戸惑う声が心の中で響く
同じくジットは意識下で答える
「本物だ
コンとポンを “依り代” に顕現してるんだ」
「やぁ、また会えたね
コンとポンもよく頑張ってたんだけど
力及ばず……で ごめんよ」
森で会ったときと同じ柔らかくも不思議なユズの声
(ああ……本物だ)
少女は、身体の内側でほっと息をついた
リッタが短く問いかける
「“向こう”は大丈夫なのさ?」
「ああ、問題ない
ちゃんと あっちは “擬似魂” が動いてる」
ジットは笑いながら自らの胸を叩く
――少女らを洞窟へ送り出す前に
ジットが飲み込んだ“水晶”
それはユズとジットが共同で作った
人の魂を学習・模倣する魔導具だった
時間をかけて使用者の人格や意志を学ぶことで
一時的に“もう1人の自分”を生み出す
ただし、動きは最適化することが難しく
人の限界を無視するため反動も大きい……
戦闘後は激痛に見舞われるという問題作でもある
だが今は、、、
その“擬似魂”が洞窟の入口で魔物の群れを
押さえているおかげで
ジットは少女の身体を通して
全力を出せる状況を得ていた
(……ジットさん
今まで2つの戦場で同時に戦ってたの?)
少女は驚愕するしかなかった
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やがて再び立ち上がる3人
少女 の身体を動かす ジット
コン を依り代とした ユズ
ポン を依り代とした リッタ
誰もが本来の身体ではないが
懐かしいパーティーがそこに揃っていた
喜びや興奮が胸の奥に灯る
「リッタ!
あいつの動きを止められるか? まだ間に合う!」
「任せて
ユズ、合図をお願いなのさ」
ユズが魔力を集中しリッタの詠唱が静かに重なる
空気が軋み始め洞窟の空間が歪む
周囲の空気が圧縮され
目に見えるほどの密度で“ナニカ”を縛り上げた
ギュギュギュギ……と嫌な音を立てながら
“ナニカ”の動きが止まる
リッタが視線を送る
ジットは頷き、剣を構えた
――息を吸い込み……刃に力が宿る
「これで終いだッ!」
剣が空気を裂き
光の筋を幾重にも描きながら“ナニカ”を刻む
上から、下から、横薙ぎに
リッタの圧縮空気ごと斬り裂き
断面から黒い煙が噴き出す
ついに “ナニカ” は形を保てなくなり崩れ落ちる
ユズがすかさず器を構えて欠片をすべて集め取った
残るは、ただひとつ——頭部だけ
ユズがそれを持ち上げて苦笑する
「……僕の出番はなかったね
リッタ 頼んでもいいかな?」
「任せてほしいのさ」
リッタは膝をつき静かに目を閉じた
彼女の唇が祈りの言葉を紡ぐたびに空気が震える
光が彼女の周囲に集まり
やがて淡い輪を描いて広がっていく
ジットも、ユズも、少女も、誰も声を出さなかった
その祈りは
戦いの喧騒をすべて飲み込んでいくほど静かで
あたかも時間そのものが止まったようだった
そして——
洞窟全体が光に満たされて
まるで天上から降り注ぐような声が響いた




