少女の話 ‐ 6
(「・ω・)「ガオー
「「…… ジット ?」」
少女の中に
確かに彼の気配を感じ取った
コンとポンが声を揃える
「ああ、そうだ
今は “同期” させてもらってる」
少女の身体を動かしながらジットの声が響く
「身体を借りてるってより
俺の意識で操ってる状態だ
嬢ちゃんの意識もちゃんとある
怖くて固まったり逆に暴走しないように
“脱力” のスキルをかけてるがな」
土を払いつつ周囲を確認したジットは
少女の鞄から器のような道具を取り出して
コンとポンへ投げた
不意の投擲にも2人は見事にキャッチしてみせる
「いい反応だ
その器を使え “奴”には絶対に触れるな。
俺が切る
お前らは切り離した欠片を“すくって”回収しろ
ユズがスキルを仕込んでいるはずだ」
少女の声でありながら明らかに別の気配
2人は頷きポンは魔獣の姿から少年の姿へと戻る
そしてジットを中心に
3人は“ナニカ”を囲むように配置についた
(切るって……弓も魔法も効かないのに?)
少女が疑問を浮かべるとジットの声が直接意識に響く
(コツがあるのさ……
触れずに“斬る”技術ってやつがな)
思考の中で交わる声に少女は戸惑うが
“脱力” の効果で身体は動かない
意識だけが戦場の中で研ぎ澄まされていった
ジットは軽く拳を握ったり
足を鳴らしたりして身体の感覚を確かめる
先程までとは違った気配を察した“ナニカ”は
片腕を液体のように変形させ、もう一方の腕を
樹木の枝のように広げながら一気に襲いかかる
視界を覆うほどの攻撃を
ジットは滑るように潜り抜けた
すれ違いざまに閃光のような一閃
「……やっぱり力は足りねぇか」
呟く彼の前で
“ナニカ”の腕先が細かく裂けて崩れ落ちる
……だが本体はかすり傷だけ
表面に浅い凹みが残るのみだった
地面に落ちた欠片は
他の魔物と違い溶け消えることもない
すぐさまコンとポンが器で掬い取り
走りながら次々と回収していく
「スキル?」「魔法?」
自分たちの攻撃が通じなかった理由を知るための
2人の問いにジットは短く答える
「スキルじゃねぇ ただの“技術”だッ !」
そう言いながらジットはさらに一歩踏み込む
刃が空を裂き “ナニカ” の黒い体を細かく刻む
“ナニカ”はジットを真の敵と見定め
瞬間移動のような高速攻撃を繰り返した
腕を槍に 脚を鎌に
全身を変化させながら襲いかかる
「ちょこまかと……!」
ジットは触れることなく全ての攻撃を
紙一重でかわし無数の斬撃を重ねる
光と闇の閃光が交錯し、
がて“ナニカ”の輪郭が削れていく
少女もコンたちも確かに感じた——
勝てる
このままなら時間の問題だ、と
だが、次の瞬間
「ギャギャギャギャガガガ——!!」
洞窟全体を震わせる絶叫
地面が軋み、少女の身体が突然押しつけられた
「ぐッ……! しまったッ!」
ジットが舌打ちをする
全身を押さえつける圧が強まって呼吸すら奪われる
動けない少女に向かい
“ナニカ” がゆっくりと迫ってきた
コンとポンは距離をとっていたためか
重圧の影響を受けておらず
"ナニカ"の足を止めようと攻撃を続ける
だが矢も魔法も
再び“ナニカ”の身体に沈み込みだけで意味をなさない
(嬢ちゃんの身体が——!)焦燥が走る
“ナニカ”が少女に触れようと腕を伸ばした
その瞬間
「……溜まったぞ! ユズ!!」
ジットの叫びが洞窟を切り裂いた
コンとポンの身体が眩い光に包まれ
その光が爆ぜるように広がる
“ナニカ”はその輝きに焼かれるように後ずさり
洞窟を満たす光の奔流が
すべてを呑み込んでいった——
光が消えたあとには——




