少女の話 ‐ 3
(「・ω・)「ガオー
僕は息を整えて少女を見た
「慌ただしくなってしまってごめんね
―“失った家族のための復讐の力” を貸与しよう」
静寂が落ちる
焚き火のはぜる音だけが部屋の空気を震わせていた
「見返りは……そうだな」
僕は少し考えてから少女を見つめる
「“ジットに装備や荷物を届けること”
それでどうだい?
普段ならちゃんとした見返りを求めるんだけど……
今回は僕たちとも目的が重なっているからね」
少女は一瞬だけ驚いたように目を見開き――
すぐに、小さく、しかし迷いのない声で答えた
「わかりました」
その返答を確認すると、僕は立ち上がった
「では――貸与を始めよう」
少女に手を向けると
淡い金の光が少女の身体を包み込む
肌の下を流れるように力の粒が宿っていく
熱に似た感覚
「……これが"スキル"……」
「力はあくまでキミの意志を通して使われる
その意志が濁れば
力もまた濁るからね 忘れないでね」
僕は静かに告げる
その言葉に少女はぎゅっと拳を握った
リッタが横で軽く手を叩く
「さて、じゃあ次は装備なのさ
ジットの装備品を持っていってもらうよ
キミにも武器を貸してあげるのさ」
振り返ると
リッタの背後のテーブルに大剣や魔導具が
整然と並べられていた
「これを……どうやって運ぶんですか?」
少女が戸惑うとリッタは笑って鞄を取り出す
「これもユズの作品なのさ
見た目よりもずっと入るし重くもならない
おまけに“安眠”のスキル付き。
旅の途中には枕にもなるのさ!」
「……枕?」
少女が苦笑するとリッタも嬉しそうに肩をすくめた
ーー
「コン! ポン!」
僕が呼ぶと
森の奥から二つの影が跳ねて出てきた
ユズを幼くしたような少女――コン
リッタを幼くしたような少年――ポン
ふたりは揃って一礼し
「「よろしく」」と声を合わせる。
「こう見えても2人とも強いから安心して!」
「……頼りにさせていただきます」
自分よりとあまり変わらない背丈の少年少女の強さに
少し疑問をもった瞬間、彼女の視界が歪んだ
空間がめくれるように変わり、目を開けると――
“魔の森”の外縁部、冷たい風が頬を撫でていた。
「転移……?」
驚く暇もなくコンが大きな狐の姿へと変わる
ポンに支えられその背に跨った少女は
風の唸りとともに森を駆け出した
少女を乗せたコンの足が地を蹴る
ーー
程なくして、駆け抜ける景色の中に
折れた木々や血の跡、魔物の死骸が目に映る
――ジットが戦った痕跡だ
その傷跡は長く続き、やがて視界の先に
欠けた刀を地面に突き立てて
座り込む男の姿が見えた
少女は息を呑み、急いで駆け寄る
ジットは顔を上げ、苦笑を浮かべた
「思ったより早かったな!
ちゃんとユズに記憶を見てもらったのか!
助かったよ、嬢ちゃんには苦労をかけちまったな」
その言葉で少女は察する
――自分が“魔の森の主”に伝えた言葉は
事情を知らない者でも
通じるよう仕組まれていたのだと
ユズたちとの会話が長引いたことは
何となく言い出せず、ただ小さく頷く。
その様子を見ていたコンとポンが
顔を見合わせて小声で囁いた
「「ジットが悪い トトさま 慌ててた」」
「やっぱりお前ら、俺には当たりが強ぇよな……」
ジットはため息をつきながらも笑う
「「でも トトさまも カカさまも 心配してた」」
ユズたちの顔を思い浮かべて
少女もつい笑みをこぼした
ーー
「倒さなきゃならねぇのは“人の形をしたモノ”だ
それに、奴の影響で暴れてる森の魔物たち
――嬢ちゃん、ユズからどんな力を借りてきた?」
少女は姿勢を正し、持ってきた荷を差し出す
「まずはこちらが、ジットさんの装備です」
「おお、ありがてぇ 今のじゃ心許なかったからな」
受け取った装備を身につけながら
ジットは少女に目を向けた
「スキルは“戦闘”と“脱力”、それに“同期”の3つを
……ジットさんなら扱えるはずだと、ユズさんが」
「なるほどな……」
ジットは頷き、ポーションの瓶を受け取る
「あと、これも
ユズさんから “必ず飲むように” と」
「ユズの特製か
……味は保証してねぇんだろうな」
苦笑しながら一気に飲み干す
舌の奥に残る苦味を押し込みながら
ジットは少女の貸与されたスキルを思い返した
――“戦闘” “脱力” “同期” ……
ユズの思惑を探るようにジットは静かに息を吐いた




