少女の話 ‐ 2
(「・ω・)「ガオー
「……どうしてジットから連絡がなかったんだろう」
手を動かしながらも胸の奥に疑問が残っていた
準備の手を止めずにリッタが答える
「通信用の魔導具を置いていってたのさ
アズラさんに会うつもりだったみたいだし……
僕たちへの気遣いもあったんだと思う
でも――まさか、こんなことになるなんてね」
言葉の端に小さな焦りが混じる
僕とリッタにはもう会えない“人”に
会いに行くとなったら気を使ってしまうのだろう
その時、少女が思い切って声を上げた
「あの……!
どういうことなのか、教えてください」
僕とリッタは視線を交わす
彼女に全部を説明する時間はない
けれど知らなければ
彼女はまた“怒り”のまま動いてしまうかもしれない
「キミや家族を襲った“魔物”
……いや、“モノ”は特殊なんだ」
リッタが口を開く
「どこから来たのか、正確にはわからない
けれど、またこの世界に現れてしまったのさ」
「それも“世界そのものに敵意を持つ形”で、ね」
僕は言葉を継ぐ
「"ナニカ"が現れるのは珍しくないんだけど、、
人の形をしたそれは――
存在するだけで周囲の感情を歪めてしまうんだ
怒り、憎しみ、嫉妬……
キミの感情が乱れていたのも、それが原因だね」
少女の瞳が小さく揺れる
「今はもう影響は薄れているけれど
あの時、もし思考が勝っていたなら……
ジットが仇を討ってくれているかも、、
と考えることもできただろう
けれどキミは、怒りのままここに来た」
リッタは短く息をついて続けた
「人の形をした“モノ”はね
“何かになりたくて”
あるいは “何かを欲しくて” 形を得た存在さ
強い願いをもった分、危険でもある
殺した人間や魔物を"吸収"し続けるんだ
自分が求める"ナニカ"を探してね
……そうしていずれは
世界そのものに干渉し始める」
言葉を重ねながら
僕の脳裏に浮かぶのはジットの背中だった
彼がひとりで追った理由も
それは“手遅れになる前に”止めるためだ。
少女が唇を噛む
「でも……ジットさんなら
その“モノ”に勝てるんじゃないんですか?」
一瞬の沈黙
リッタが肩をすくめて答える
「無理さ。
さっきの話でもあっただろう……
ユズは “力を吸い取る略奪者” なのさ
神様との戦いのあと
ユズは人々に貸していた
"スキル" や "ステータス" を回収してるのさ
本当は “返した” だけなんだけど……
皆からすれば “奪われた” って感じるのさ」
僕は小さく頷く
「だから今のジットは自分の力と
僕たちと過ごすための“不老”のスキル
あとは最低限の護りだけ
以前のような力はもう持っていないんだ」
少女は目を伏せた
「急ぎ足で悪いけど、キミはどうしたい?」
僕は問いかける
「このまま僕たちが解決してもいいんだよ
キミは無理に戦う必要なんてない
家族の為にここまで来ただけで十分じゃないかな」
長い沈黙
少女は拳を握りしめてまっすぐにユズを見た
「相手がどんな“モノ”であっても……
殺されたのは私の家族です
だから、私に“復讐する力”をください」
その言葉に、部屋の空気が変わった。
リッタが目を細めて僕は小さく笑って頷く。
「……いい覚悟だね
なら、こちらも応えよう」




