少女の話
(「・ω・)「ガオー
自分が想像していたよりも
"魔の森の主" は
はるかに圧倒的な存在だった
改めてユズの前に立つが
どんな提案をすればいいのか――
言葉が喉の奥で詰まって出てこない。
「僕たちもね
“力ある者の責任” ってやつを
神様からしっかり教えられているからね」
ユズは穏やかに笑いながら
けれど瞳の奥には測れない深さがあった
「今の僕には神様からの制限がある
できることは限られているけど……
それでもキミにしてあげられることはあるよ
もちろん、“見返りありき”でね
でも、、、
"力を借りない" ことを選んでもいいし
"復讐を諦めて生きる" って道もあると思うよ」
少女は小さく息をのんだ
心が小さな迷いを見せる
ユズはふっと口角を上げる
「そうだなぁ、たとえば
――前に来た商人との誓約がいい例かもしれない」
淡い光を帯びた机の上にユズは古びた帳面を置いた
数年前、この森に迷い込んだ商人は
取引の見返りとしてこう誓ったのだという
『代替わりしたとしても商売が続く限り
食料と甘味、珍しい品を森へ納め続ける』
その代わりに彼が得たのは
―― “商才” “機転” “詐欺” のスキル
貸与期間は30年……
本人は歓喜のうちに森を去ったが
次の代、またその次の代にどんな重荷と残るか
ユズとリッタには容易に想像できた
「人は今の "自分の幸せ" と引き換えに
“誰かの未来”を差し出すことがある
そんな “代償” ……納得できるのかな」
ユズの言葉には、どこか祈るような響きがあった
「……得も、損も
キミの考え方次第ってことだね」
「もう少し優しく言ってあげるといいのにさ」
リッタが肩をすくめる
「ねえ、キミが復讐したい相手って、誰なんだい?」
少女はしばらく唇を噛み
そして小さく震える声で語り出した
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家族で山菜を採りに出かけた日
いつもと変わらないはずだった
少し目を離してしまった弟を探して
山を登っていたとき
あいつらは現れた
山の魔物たちと
黒く歪んだ“人の形”をした得体の知れないモノ
母が、父が、弟が――倒れ、血の匂いが広がった
その脅威が自分にも……
という時にジットが現れて魔物を斬り伏せてくれた
魔物達が斬られているときに
"人形のナニカ"によって
家族たちの身体は山の奥に引き摺られていった
彼は家まで送ってくれた……
お金の入った袋を手渡して
「“魔の森の主”に会いに行け」
と言い残してその足で山に戻った
ギルドに助けを求めても誰も信じてくれなかった
笑われ、侮られ、言葉の刃が何度も心をえぐった
“残念だったな”
“依頼料もないくせに誰が動く”
“俺の家に住まわせてやるぞ”――
……その全てが、怒りに火をつけた
だから少女は、走った
涙で前が見えなくても森を目指して、ただ走り続けた
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少女の語りが終わると
ユズとリッタは短く視線を交わした
沈黙の中で互いの思考が一致したのがわかった
「……だから言ったのさ!
似合わない役を演じる前に
さっさと手を貸せばよかったのさ!」
「そうだね!ごめん!……急がなくちゃ!」
少女は自分の話を聞き終えて急に慌てだした
2人を見ていることしかできなかった




