魔の森の主 ‐ 4
(「・ω・)「ガオー
「聖女アズラ」
その名を聞いた瞬間リッタの口元がふっと緩んだ
「なるほど
今回の“おつかい”は
やけに長いと思っていたけど……
奥さんに会いに寄り道してたってことか」
「まったく、ジットめ……」
僕はため息をつきながらも笑みをこぼす。
「だから無理して僕たちに
付き合う必要なんてなかったのに
アズラさん
もうおばあちゃんになってるかな……
でもまぁ、その寄り道のおかげでキミは助かった
偶然じゃないってことだね!」
少女が言葉を続ける
「ジットさんから
……お金の入った袋を渡されました
『森までの道に使いなさい』と」
袋の中を確かめると
ひとつのペンダントが入っていた
リッタがそれを見て目を細める
「懐かしいね
それ、ユズが作った護りのペンダントなのさ
目的地まで迷わない“導き”のスキルがついてる」
僕が続ける
「それだけじゃないよ!
体力と速さのステータスも付与してるからね
――この森まで歩くのに
あまり疲れを感じなかったろう?」
「確かに……
ほとんど休まなくてもここまで来られました」
「だろうね」
リッタは懐かしそうに微笑む
「アズラさんの知り合いなら教会の話から始めようか」
僕は湯飲みを手に取りながら語り出した
「少し前まではね
人間が安全に暮らせる土地なんてほんのわずかだった
村は点々と散らばり魔物の影に怯えて暮らしていたんだ
そんな時代にはさ
聖都から“聖女”たちが定期的に村を訪れて
“祈り”の力で魔を払っていたんだ
人々はその巡礼に支えられて生きていた」
少女は息を呑む
僕は懐かしむように目を細めた
「でも“祈り”は簡単な力じゃない
修行も危険な旅も必要だった
だから僕たちは、教会に一着の修道服を贈った
―“祈り”のスキルの"開花の兆し"を与える服をね」
「“開花の兆し”……?」
少女の呟きに、リッタが穏やかに補足する
「誰にでも眠っている才能みたいなもでね
それを"スキル"に変えるには努力が必要なのさ」
「つまり、“魔の森の主”であるあなたは……
人にスキルを授けることができる存在
――まるで神様、、ですね」
僕は笑った
「そう、まさに神様さ。
人々を苦しめる魔物を討ち
作物を枯らす嵐を鎮め
病を癒やす薬を編み出し
魔法の理を広めた
――けれど、
僕たちの力はこの世界には“大きすぎた”んだ」
静かな間。リッタが小声で続ける
「だから神様が、僕たちに口を出した
“世界の歩みを進めすぎるな”って」
僕は目を閉じて微笑んだ
「あの時は、怒られたなぁ……」




