2.案内人
(「・ω・)「ガオー
咄嗟にボクは声の方へ振り向いた――つもりだった
けれど視界は暗闇に包まれたまま
首をひねるときの突っ張りもなければ
空気の流れすら感じられない
声以外の刺激を得ることは何ひとつできなかった
仕方なく
声の主がいるであろう方向へ意識だけを傾けてみる
身体の感覚は依然としてなく
ボクという存在を確認できるのは この思考だけ
それでも――声の主は
確かにボクの存在を「認識している」ようだった
その声が続ける
「死んでないのは確かなんだけどね
元の場所にはもう戻れないのさ」
現代ではゲームや小説を好む人だけでなく
多くの人々が “異世界転生” という言葉を知っている
それほどありふれた物語
現実と空想の境目が曖昧になっているほどに
――まるで今のボクのように
これは本当に現実なのか
どんな世界へ行くというのか
なぜボクが選ばれたのか
文明は?
魔法は?
この声は……神さま?
思考は次々と浮かんでは消えてまとまりを失う
自分の意識が分散していくような
そんな不思議な感覚だった
その考えを汲み取るようにあの声が響く
「君たちの世界では
神様なんて "モノ"に 気軽に会えるのかい?
――僕は、ただの案内人さ。」
暗闇と感覚のない身体
理解できない状況
もしここが本当に“異世界への入り口”なら
神様や女神様が現れて優しく導いてくれるはずだ
なのに――声の主は自らを神ではないと断言した
その一言が、ボクの不安をさらにかき立てる
「キミには信じていたモノや
大切にしていた習慣はあるのかい?
困ったときに…神様や女神様に
手を差し伸べてもらえるような“なにか”が、君に?」
……ばあちゃんなら助けてくれるかもしれないな
だいぶ前に亡くなったけれど
――この声は、神様じゃないのか?
ばあちゃんあっちでも元気にしてるかな
ここはどこなんだ?
あなたは……一体、誰?
思考があちこちへ散っていく
「だから言っただろう
僕は “案内人” さ」
ボクの考えを直接のぞかれているような
そんな感覚
次々と投げかけられる言葉に戸惑いながらも
ボクはただ――その続きを待つしかなかった
(「・ω・)「ガオー




