17.人型の魔物
(「・ω・)「ガオー
「出て行ってほしいんじゃなかったの?」
ボクは率直に尋ねた
村のためにボクたちを留めておけないと
言っていたジットが
突然旅への同行を申し出た理由が気になっていた
「村のために帰ってきたのは本当だ
……だが、冒険者を辞めた理由は別にある」
ジットはゆっくりと腰を下ろし
焚き火の明かりを見つめながら語り始めた
「俺は聖都でも上位の冒険者パーティーにいた
仲間と共に教会の依頼でな
“森の開拓”にあたっていたんだ
魔物を討伐し人が住める土地を増やす
――それが任務だった」
この世界では人間たちが安全に
暮らせる場所は限られている
だから冒険者たちは命を懸けて
魔物の棲む土地を切り開き
そこへ教会が“祈り”のスキルを持つ者を派遣する
彼らの祈りが届いた地は
やがて人の暮らせる土地となる
ジットのパーティーはその最前線に立っていた
「いつも通り
“絶対に無理はしない”ことを徹底してた
……それがながく続けるコツだからな
だが――あの日……見たこともない魔物が現れた
…………あっという間に2人がやられた」
焚き火の光がジットの横顔を照らす
その表情には悔恨と恐怖が交じっていた
「そいつは武器も道具も持っていなかった
“直感”で分かったんだ――勝てねぇって
……人型の魔物なんて、見たこともなかった」
ジットは握りしめた拳を震わせる
「仲間が倒れていくのを見て……俺は命令した
“逃げろ" "俺が食い止める”ってな」
声が低くなる。
「だが……
奴は動いたようには見えなかった
気づいた時には逃げたはずの仲間の前に奴がいて…
どんな魔法かも分からねぇ
奴は仲間たちを押し潰して動けなくした
次の瞬間……切り裂かれて……」
焚き火がはぜる音がやけに大きく響く
「何もできなかった俺を見て
そいつは笑った
……笑いながら
仲間の亡骸を引きずって森の奥に消えた」
ジットは目を伏せた
「生き残ったのは
俺と……足を失った仲間の2人だけだ
分かっているのは
――“歩かずに移動する手段”
“押し潰す力”、そして “鋭い斬撃”
そいつは……そんな力を持っていた」
「……仇討ちが目的かい?」
リッタの声がいつになく静かだった
「そうかもな」ジットは苦笑する
「聖都に戻っても
誰も信じちゃくれなかった
“人型の魔物”なんて存在するわけがないとさ
俺は無茶をして仲間を殺した無能なリーダーだ
……居場所なんて……もう何処にもなかった」
いつも豪胆な彼とは違って
どこか壊れかけたような声音だった
「でもよ……あいつらを死なせたのは俺だ
だから、、
せめて遺体を見つけて弔ってやりたい
……それだけなんだ」
沈黙ののち、ジットは顔を上げる
「もちろん
お前たちに“仇討ち”を手伝えとは言えねぇ
お前たちのには関係ない話だからな……
けど、もし旅の中で聖都に行くことがあるなら
――その時は、力を貸してほしい」
その目はどこまでも真剣だった
「ユズをそんな恐ろしく強い
"モノ"と戦わせようとしてるなんて……」
リッタは少し怒ったように言った
その声にはユズを守りたいという気持ちが滲んでいた
「……そんな話を聞いて
行かないわけにはいかないよ」
ユズは静かに答える
リッタは深く息をつき
「……そう言うと思ったさ」と呟く
呆れたようで どこか優しい微笑みだった




