14.便利な魔法
(「・ω・)「ガオー
「それにしても“開花の兆し”なんてもの……
俺は聞いたことがなかったな
教会も教えないってことは
――知らないのか
それとも広めたくないのか……
まぁ、考えても仕方ねぇか」
ジットぽつりと呟く
「スキルだけじゃなくて
魔法も教会の管轄なんだね」
ボクはまたひとつ
この世界の “当たり前” を学ぶ
“誓約”と“譲渡”を使えば
相手のスキルをそのまま受け取ることもできる
けれど
その場合は相手のスキルが完全に消えてしまう
だからボクはジットの持つ“知識と経験”
を譲り受ける形で自身の中に
“開花の兆し”を芽生えさせていった
その後は
"スキル"の獲得の為にひたすら修練の日々だった
リッタの話では
複数のスキルや魔法を扱える者は極めて稀だという
つまり
ジットはこの世界でも屈指の冒険者なのだろう
村を出る条件についても……
村全体の安全を思えば納得できる
ただ追い出すだけではなく
本当の“師”として知識を分け与えてくれる――
その厚意に、感謝しかなかった
「狩り、探索、採集……
冒険者としての活動中はほとんどが野宿だ
そんな時になパーティに1人でも
魔法が使える奴がいると助かるんだ」
ジットは魔法について語り出す
“譲受”のスキルのおかげで
彼の知識や感覚が澱みなく伝わってくる
譲り受けた情報を通して
ボクはこの世界の魔法の構造を理解し始めた
魔法の発動には
“言葉”と“イメージ”の結びつきが欠かせない
以前ボクがひとりで試していた時も
似たような感覚はあった
けれど、元日本人だった頃の感覚が――
"本当に魔法なんて存在するのか"
という疑いを心のどこかに残していたのだと思う
ジットの知識が流れ込むことで
“魔法”という現象が
この世界では"確かに存在"している
そう確信できるようになった
「俺の使える魔法は
“明かり”と“水”を生み出すものだ
どちらも冒険者にとっては欠かせない力だぞ
若い頃に助けた教会の神官に
頼み込んで教えてもらったんだ
今思うと……運が良かったよ」
そう言うとジットは指を鳴らした
「見てろ」 短い詠唱とともに
指先から柔らかな光の球が浮かび上がる
次に、掌の上に透明な水があふれ出して
静かに地面を濡らしていく
「 〈トーチ〉 、 〈ウォータ〉
これが発動に必要な “言葉” だ やってみろ」
促されてボクは手のひらを見つめる
「ウォータ」と呟いた
その瞬間――
直感が警鐘を鳴らした
ボクは咄嗟に手を木々の方へ向ける
轟音とともに水が滝のように吹き出した
あっという間に数本の木が根元から倒れ
土煙が舞い上がる
呆然とするボクの耳にジットの叫び声が飛び込んだ
「ユズ!!」
我に返ったボクは慌てて手を握りしめると
水の奔流が止まり静寂が戻る
しばらくの間、お互いに言葉を発せなかった
「……俺は
そんな威力の魔法を教えたつもりも
見たこともねぇ
ただの便利なだけの……
魔法のつもりだったんだがな」
ジットの声には驚きと
わずかな恐れが混じっていた
「心当たりはあるか?」
そう問われたボクは一度だけ息を整え
「リッタも一緒に話したい」と伝えた
ジットは黙って頷く
そして、その夜の訓練は静かに終わった
翌日――
ボクたちは再び、話し合う約束を交わすのだった




