表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見返りありきの装備職人  作者: 隠し子
むかし むかし
12/50

12.疑惑

(「・ω・)「ガオー



「お客さんかい?」



少し前に帰ってきていたリッタは

突然の来訪にも慌てることなく 

お茶の準備をしてくれている



村に住む主婦たちの集まりは

持ち回りで家を行き来しているらしい


その日によって

客として迎えられる日もあれば

もてなす側に回る日もあるという



ボクの成長なんて比べものにならないほどに

リッタは “人間の生活” というものを

貪欲に学び続けていた




「それで……ご紹介いただけるのかな?」


お茶を並べ終えたリッタがボクの隣に腰を下ろして

自然に話の流れを引き取った



「ボクもさっき会ったばかりなんだけど

 ……お父さんの友達らしいよ


 お父さんが冒険者として村を出た時に

 一緒に旅立ったんだって」



ボクたちの会話を静かに聞いていた男は

目だけで関係を探るように観察していたが

やがて口を開いた



「俺の名はジット

 お前たちの親父と一緒に村を出た冒険者だ


 聖都に着いてからは

 それぞれ別の仲間と行動していたが……


 お前らの親父が死んだと聞いたのは

 ずっと後のことだった




 それにしても “ユズ” に妹がいたとはな

 大変だったろうが……

 村の評判は悪くない ――立派に育ったな」



たった数回会っただけの"ユズ"に

まるで父親のような温かさで言葉をかけてくれる


この世界に来てから感じたことのない

親からの愛情を想いボクは少し胸が熱くなった




「どうしてこの村に?」

距離感をつかめないままにボクは問い返す



「俺も歳でな

 冒険者稼業にも無理が出てきてなぁ


 それに……こんなんでも俺は村長の息子なんだ」



初めて出会った冒険者への興奮と

次期村長という肩書きがもたらす緊張


この小さな村で

彼に目をつけられたら

平穏な日々は続かないかもしれない




「そんで――」

ジットは表情を引き締め、低い声で言った



「単刀直入に聞く

 お前らは"何を"してる?」



「……何って……?」

その言葉で、ボクはようやく気づいた



彼はただの挨拶ではなく確かめに来たのだ


旅立ちを決めることも

学びを求めることも悪くはない



だがジットはボクたちの行動を

“異質なもの”と感じているらしかった



リッタはちらりとボクに視線を送る


――「何を」「どこまで」話すのかを

任せてくれたのだろう




ボクは深呼吸をして言葉をまとめる

ジットは急かさず黙ってこちらを見つめていた



「……嘘をつかずに話すけど……

 でも話した後にボクたちへ

 危害を加えないと約束してほしい…………です」



「疚しいことがあるような言い方だな」

ジットの目が鋭く光る



それでもボクは

その視線を正面から受け止めた



「わかった。話してみろ」


「その前に――約束の握手をお願いします」


警戒されている状況で

握手を求めるなんて無謀だと分かっていた



だが意外にも

ジットは何も言わずにボクの手を握り返してきた

ごつごつとした掌に長い旅の跡が刻まれていた




誠実に話そう――そう決めてボクは語り始める




「信じてもらえるか分からないけど……」


ある日 “人"ではない"モノ” に出会ったこと


その存在にスキルの成り立ちを教わったこと


その出会いをきっかけにスキルを獲得したこと


そのスキルで“能力のやり取り”ができること


村の誰からも不当に能力を奪ったりはしていないこと



――村を出る前にできる限りのことを

  学びたいと思っていること



すべてを正直に伝えた



「嘘は……ついてないようだな

 でも それだけじゃないんだろ?」


ジットは確信を持ったように静かに問いかける




どう答えるか迷ったが先にリッタが口を開いた

「ユズはボクを守ろうとしてくれているんだ」




「ボクもユズが“モノ”と出会った場にいた

 そして今のボクには

 人の持っているスキルを “視る” 力がある」



「……本当なのか?

 スキルを確かめるなんて

 聖都でも高い金を払ってでしかできないぞ」


ジットは半信半疑のまま腕を組んだ

「俺のスキルはわかるか?」




「んー

 “狩人” “弓術” それと“直感”

  ……あ、魔法も使えるよね?」


リッタの答えにジットの目が見開かれる

次の瞬間 彼は静かに笑った




「正解だ。ほらよ」

懐から一枚の紙を取り出す


そこには聖都で記録された

スキルとステータスが記されていた



「……なるほどな

 直感的にもお前たちを疑う理由はなさそうだ


 だが――

 わかり合うための“会話”ってやつは必要だろ」




ジットは茶をすすりながら腰を落ち着けた

夜の光が窓辺に揺れている

僕たちは互いの溝を埋めるための話を静かに続けた



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ