10.選んだスキル
(「・ω・)「ガオー
「次はキミの選んだスキルについて
聞かせて欲しいのさ」
世界の仕組みと今後の方針を話し終えた
リッタは静かにボクへと視線を向けた
「“狭間”では実際に使って
確かめることができなかったからね」
その言葉にうなずきながら
ボクは少し緊張しながら答える
考えた通りに扱えるのかは不安だけれども——
話さなければ始まらない
ボクが選んだスキルは 3つ
「3つだけ?」と思うかもしれないが
それでも3つだ
そもそも"狭間"に保管されていたスキルは
"道草" "不運" "不器用" "転倒" "饒舌"……など
どうにも役に立ちそうにないものが多く並んでいた
その中でボクが選び抜いたのは次の3つだ
"貸与"
自身の所有するものを
人やモノに貸し与える
"誓約"
決して破ることのできない契約を結ぶ
互いの同意と“握手”が条件となる
"譲受"
他者の所有するモノを譲り受ける。
“案内人”としてのリッタの話を思い出す……
この世界では
人々はあまり強くなく
スキルの獲得も難しい
ならば——と考えた
もし他人に自分のステータスを
5でも10でも一時的に力を貸し与えられるなら
それだけでも十分な助けになるはずだ
そして返却の際に相手の生活に支障をきたさない範囲で
その力の一部を譲り受けられれば……
そうすればボクは少しずつ
強くなっていけるかもしれない
「例えばだけど——」
この世界に来てから
まだ1人も冒険者には出会っていないが
もし、そういう戦う人々がいるなら
自分の “力” を貸し与え
無事に帰ってきたときに
その冒険者にとって活用されていない
“魔力” や “経験” を少し譲ってもらうかと……
「……できれば
相手のステータスが見える能力も
あれば良かったんだけどね」
ボクは苦笑いを浮かべる
リッタは何も言わずに目を細めた
「どうかな?」
スキル選択のの意図を聞き終えたリッタは
考えを整理するように呟く
「……そうだね」
やがて リッタは真剣な表情で口を開いた
「キミは、僕と混ざってしまったことで——
この世界の人間よりずっと長く生きることになるだろう
だから
その長い生を無事に過ごすためには……
"目立たずに力を得ること"
それが一番大事だと思うよ」
リッタの声は穏やかだったが
そこにある種の警告が滲んでいた
「報酬として受け取る力も
ほんの少しずつでいい
もし“直接、能力を貸せる”と知られたら……
危険な人たちに狙われるかもしれない
どこかに閉じ込められて
ずっと能力を貸し続けるだけの人生——に……
そんなの、退屈すぎるだろう?」
リッタは冗談めかして笑ったが
ボクにはその笑みの裏にある
現実の怖さがはっきりと見えた
この世界の何も知らないまま
“人を助けたい”なんて思っていた
自分の甘さが恥ずかしくも感じる
リッタはそんな戸惑いすら受け止めるように
少し優しく声をかけてくれる
「だからさ
キミの能力は“装備”に与えるのはどうかな?」
「装備に……?」
リッタの提案にボクは首を傾げた
「能力のやりとりについては
“口外しない”という誓約を条件にすればいい
その上で "装備品に能力を宿して貸し出す"
返却時に "相手に不必要な能力を譲って貰う"
そうすれば、相手を助けながら
報酬として少しずつ力を得られるだろう?」
リッタの声には、珍しく熱がこもっていた
「この世界には魔物もいるし
まだ人間が踏み入っていない土地もたくさんある
——主に冒険者を相手に装備を貸し出すだけで
立派に生計を立てられるさ」
彼女は珍しく興奮したように笑う
「そうやって積み重ねていけば……
強くなり続けることができるキミは……
いつか世界を救うような
“ヒーロー”になる時が
来るかもしれないのさ!」
リッタの言葉にボクは知らず笑っていた
怖さよりも
胸の奥に灯るような小さな期待が勝った
あの"狭間"に迷い込んでしまってから……
平和な国で育ったボクが知らない世界で
生きて行かなければならないことに
不安が消えることはなかったが……
“貸すことで強くなる”——
そんな不思議な道ならボクにも歩けるかもしれない




